The Time Walkers 9 沖田総司
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オリジナル朗読CD The Time Walkers 9 沖田総司
1.オープニング
過去から未来へ、連綿と続く時の流れにおいて、偉人と呼ばれる歴史に残る出来事を成し遂げる人物が現れます。彼らの決断の裏側には何があったのか。これは偶然のいたずらから、時の狭間に迷い込んだ者たちの物語。そして、運命に翻弄された者たちの物語。その扉を開く時の散歩者があなたを知られざる歴史の裏側にご案内することになりましょう。
序幕
从过去到未来,在连绵不断的时间长河中,不断出现完成永载史册的丰功大业的伟人。在他们的决断的背后隐藏着什么呢。这是关于因为偶然的恶作剧而迷失在时空夹缝中的人们的故事。同时,也是被命运玩弄的人们的故事。打开这扇时空之门,让时空的散步者来引领你走向不为人知的历史另一面吧。
2 切腹
慶応元年2月、京都、新撰組の二部屯所内には重苦しい空気が漂っていた。隊を脱走した罪により、副局長だった山南敬助の切腹が行われるのだ。そして、俺の役目は、その介錯人だった。白装束で正座する山南さんの背後に立つと、俺は刀を振り上げ、彼の首筋を見詰めた。
「沖田君、君が介錯人で安心したよ。これで苦しまずに旅立てそうだ」
そう告げた山南さんの声はとても穏やかで、少しも死を恐れる様子は無かった。きっと、大津の宿場で俺に投降した時から、こうなる事を覚悟していたのだ。あの日、山南さんは新撰組を守るために脱走を決意したと語った。彼にとって新撰組は、命を落としてても守るべき存在だった。俺も信じていた。
新撰組はずっと孤独だった俺が、やっと見付けた居場所なのだと。しかし、その気持ちが今は揺らいでいた。俺を弟のように可愛がってくれた山南さん、その命を、自分の手で奪わなくてはならないのだから。
「どうしてこんな事に」
山南さんの背中を見詰めながら、俺の心に、過去の記憶が甦ってくる。仲間を求め、ひたすら己の居場所を追い求めてきた過去。それは、この時代で新撰組隊士、沖田総司として生きる前。俺がまだ、150年先の「現代」と呼ばれる時代で生きている頃の記憶だった。
庆应元年2月,京都,新撰组二部屯所内弥漫着凝重的气氛。原副局长山南敬助因脱队的罪名,即将被处以切腹之刑。而我的任务,就是做他的介错人。站在一身白衣,正襟危坐的山南背后,我举起刀,注视着他的脖子。
“冲田君,有你当我的介错人我就安心了。这样我走的时候也就不会痛苦了。”
山南说出这些话时语气非常平静,没有一丝对死亡的恐惧。当他在大津的驿站向我投降的时候,一定就已经预料到如今的结局了。那天,山南说他是为了保护新撰组而决心出逃的。对他来说,新撰组是值得他拼上性命保护的。而我也相信了。
新撰组给了一直孤苦伶仃的我,一个归宿。但是现在,这种想法却开始动摇了。因为,我现在就要亲手夺去那个待我如亲弟弟一般的山南的性命。
“为什么会变成这样?”
凝视着山南的背影,过去的记忆在我的心中苏醒。那是我一心追寻着同伴,一心追寻着归宿的过去。那是在我还没有成为现在这个时代的新撰组队员,冲田总司之前。我在150年之后,那个被称为“现代”的时代生活时的记忆。
3 孤独
ずっと孤独な人生だった。20年以上の人生を俺は家族も、恋人も、友人も無く、誰も心を許せる相手を持つ事無く生きて来た。別に一人でいる事が好きだったわけじゃない。ただ、どうしても人を信じる事が出来なかっただけだ。そもそも俺の人生は、最初から裏切られたばかりだった。生まれてすぐに親に捨てられ、施設に預けられたのを皮切りに、里親の家を盥回しにされ、友人と呼べる相手が出来ても、いつも関係は長続きしなかった。そんな人への不信感が決定的になったのは、長年の親友と思っていた相手に騙され、借金の連帯保証人として、多額の負債を背負わされてからだ。
人は平気で嘘をつき、相手が誰であろうと簡単に裏切る。それが短い人生の俺が学んだ結論だった。矛盾するようだが、そうやって心に刻まれた他者への警戒心によって、俺の孤独感は更に増していた。人を信じられなくなればなるほど本当に信じられる仲間が欲しくなるものだ。誰でもいい、仕事での愚痴を溢したり、日常の些細な幸せを語り合える、ただ、そんな相手が。
しかし、心に染み付いた不信感から、俺はどうしても人に心を開くことが出来なかった。そして、それ故に、俺が求めるような仲間を得ることが出来なかった。誰かを信じられるようになりたい。そう願いながらも、何度も挫折を繰り返し、いつしか俺は、諦め掛けていた、素直な人間に生まれ変わろうとする事に。だが、そんな俺が、あの日を境に、文字通り生まれ変わったのだ。しかも、幕末の京で活躍した、あの新撰組隊士、沖田総司として。
始まりは高速での玉突き事故だった。その事故の瞬間に起きたことは、スローモーションの様に脳裏に焼きついている。前の車が突然スピンして、後ろを走っていた俺の車にぶつかってきたのだ。ついてない。運転席で激しい衝撃を感じながら、思わず心の中で呟いていた。次に気づくと、大破した車体に挟まれた俺の周りで、他の車から降りてきた野次馬たちが何か叫んでいた。その声がどれも遥か遠くから聞こてくるように感じられる。痛みは無かった。いや、痛みだけじゃない、全身の感覚が麻痺していたのだ。どうやら俺は死ぬならしい。そんな思いが俺の脳裏を過ぎった。ろくでもない人生だ。構いやしないさ。思わず自虐の笑いが漏れる。俺が死んだところで、どうせ悲しむ人間など誰もいやしないのだ。だったら、一層このまま楽になった方がましかもしれない。そう諦めた時だった。野次馬の背後から、こちらを見詰める人物が目に留まった。黒のコートに黒の帽子、それは、全身黒ずくめの老人だった。
「死神」そんな言葉が脳裏に浮かんだ。
薄れ行く意識の中、一瞬だけその老人と目が会う。その瞬間だった、鋭い眼光に吸い込まれるように、俺の意識はそのまま暗い闇の中へと落ちていた。
我的人生一直是孤独的。20多年以来,我既没有过家人、恋人或是朋友,也没有任何人可以同他推心置腹。我并非喜欢独来独往。只不过,无论如何我也无法相信他人。原本,从出生那一刻开始,我的人生就充满了背叛。出生不久就被父母抛弃,自从进了孤儿院开始,就辗转于不同的家庭中,就算交到朋友,关系也从来不会持续太久。最终导致我无法信任任何人的决定性的一件事,是被一个相交甚久的朋友骗去当借贷担保人,导致背负了大量的债务。
人们总是可以面不改色的骗人,他们可以毫无顾忌地背叛任何人。这就是我短暂的人生经历所得出的结论。或许有一点矛盾,但是我的内心中对他人有着强烈的戒备心,因此我便感到愈发孤独。越是难以相信别人,就越是期望能找到能诚心相待的朋友。不管是谁都好,只要能相互吐吐工作上的苦水,聊聊平时生活里开心的点点滴滴,只是这样就足够了。
但是,对他人的不信任已经深深渗入我的内心,无论如何我也无法对他人敞开胸怀。也正是因为这样,我始终也没有找到期望中的朋友。真希望自己能相信别人。抱着这样的期待,我又经历了数次挫折,终于我开始放弃了,放弃了重新成为一个直爽的人。可是,就在那天,我真的重生了。而且成为了那个在幕府末年活跃于京都的新撰组成员冲田总司。
事情起源于一起高速公路上的追尾撞车事故。事故瞬间发生的事,就像慢镜头一样深深地印在我的脑海里。我前面的车突然打了个急转弯,朝我的车冲了过来。真是倒霉。在驾驶座上感觉到激烈撞击的同时,我心里不禁这样念到。回过神来的时候,我已经被夹在破烂的车子里,周围有一群从别的车上下来的看客在吵吵嚷嚷。他们声音仿佛来自某个遥远的空间。我一点也没有感觉到疼痛。不,不仅是疼敢,我的全身都已经麻痹了。看样子我已经死了吧。一瞬间这种想法掠过我的脑海。反正活着也没什么意思。算了。我不禁开始自嘲。反正我就算死了,也不会有人伤心难过。那还不如干脆死了痛快。就在我准备放弃的时候,我的视线停留在了人群背后。有个人在注视着我。一个穿着黑色风衣,戴着黑色帽子,一身漆黑的老人。
“死神”我的脑海里立即就浮现了这个词。
意识渐渐模糊的时候,一瞬间我的视线与老人相交。就在这一瞬间,我仿佛被他锐利的眼神吸过去一般,我的意识就这样猛然朝着黑暗坠落下去。
4 新撰組
次に目を開けると、俺は畳敷きの部屋で、布団の上に寝かされていた。そこは天井に梁のある古い日本家屋で、どう見ても病院とは思えなかった。少なくとも死後の世界って訳じゃないような。どうやら助かったらしい。少しばかりほっとした時だった。
「総司、やっと気づいたか?」
声の方へ視線を向けると、布団の脇に二人の男が座っていた。厳しい顔つきの大男に、鋭い目つきの優男だ。しかしどういう訳か、二人とも、髷に袴姿という、まるで時代劇に出てくる侍のように格好をしている。
「心配したぞ。稽古中にぶっ倒れやがって」
「泣くなよ、近藤さん。その様を誰かに見られたら、隊の士気にかかわる。ほら、総司も呆れてるぜ」
薄っすらと涙を浮かべる大男に、隣の優男が諭すように言う。
稽古?隊の士気?一体何の事だ?どうやら大男が俺の無事を喜んでいるらしい事は分かった。しかし、まるで話が見えない事に苛立ち、思わず口を開く。
「ちょっと待ってください。先から総司って誰の事です?そもそもここは…」
だが、そこまで言いかけて俺は、ある事に気づき凍りついた。
「…あ」
頭が可笑しくなったのかと思った。あれほどの大事故に遭ったにも拘わらず、俺の体は掠り傷ひとつ負ってなかった。それはいい。問題はその鍛え抜かれた体がまるで見覚えの無い物だった事だ。
「からかってんのか?総司」
動揺する俺に構わず、優男は呆れたような視線をこちらに向けた。
「新撰組隊士沖田総司、それがてめえだろうが。でなけりゃ、一体誰だってんだ?」
当然というような表情で告げられ、更に動揺する。新撰組といえば、150年以上前、幕末の京都で、幕府打倒を目指す浪士たちの取り締まりに当たった剣客集団だ。沖田総司は、その新撰組の一番隊隊長として活躍した天才剣士だったはず。男は、俺がその沖田総司だと言うのだ。現実的にありえない。過去にタイムスリップするはずも、まして、沖田総司になるなんて事が起こるはずがない。
一体何の冗談なんだ?そう問い詰めようとして、俺は更に驚いた。俺の脳裏に、なぜか目の前の二人の名が浮かんだのだ。近藤勇に土方歳三。そして、彼らが新撰組の局長と副長だという事も。
「まだ疲れが残っているようだな。総司、今日はゆっくり休め」
それだけ言うと、俺を沖田と信じる二人は、呆然とする俺を残して、部屋を出ていた。
ふさけるな!これはやっぱり夢に違いない。きっとあの交通事故の後に、病院へと運ばれ、そのベッドの上で、悪い夢を見ているのだ。あまりにも受け入れ難い状況に、俺は寝床を抜け出すと、部屋の外へ出ようとした。
だが、障子戸を開けて、縁側に出たところで、その足が止まった。縁側に面した中庭で、十名ほどの若者達が、木刀を振って稽古をしていたのだ。その誰もが侍の格好をしている。そして、赤地に誠の文字が浮かぶ旗。
そんな。全てが始めて見たはずの光景だった。それにも拘わらず、全てに見覚えがあった。ここは、新撰組の壬生の屯所だと、あるはずのない記憶が告げていた。瞬間、俺は悟った。どういう原理か分からない、だが、俺は時代を飛び越え、新撰組の剣士、沖田総司になってしまたのだと。
睁开眼的时候,我已经躺在了一个榻榻米房子里的被褥中。那是一间天花板上有梁的古老日式房屋,怎么看也不像是医院。至少这里不是死后的世界吧。看样子是得救了。我稍稍松了口气。
“总司,你终于醒了?”
我朝着声音的方向望去。被褥的旁边坐着两个人。一个是神色严厉的高个子男人另一个是眼神犀利面容亲切的男人。可是不知为什么,两人都扎着发髻,穿着和服,简真就跟大河剧里出现的武士一模一样。
“担心死我了。你练剑的时候突然晕倒了。”
“别哭了,近藤。你这样子要是让人看见了,会影响队伍的土气。你看,总司都受不了了。”
大个子男人的眼里有些许泪水,旁边面容亲切的男人劝道。
“练剑?队伍的士气?他们到底在说什么?”看得出大个子男为我的平安无事感到高兴。但是,我完全搞不清楚他们到底说什么,不禁有些着急。
“等等。你们刚才说的总司到底是谁?还有这里究竟是…”
话说到这里,我突然意识到一件事,一下子僵住了。
“…啊!”
我真的以为自己的脑袋出问题了。明明发生了那么严重的事故,我身上却一点伤痕也没有。不仅如此,我的身体看起来经过锻炼,而对我而言却是完全陌生的。
“你在耍我们吧?总司。”
面容亲切的男人不顾我的疑惑,一脸不屑地转过头对我说。
“新撰组队员冲田总司,不就是你么。不然,你以为是谁?”
被他这么一副理所当然的样子一说,我更加疑惑了。新撰组,就是那个150多年前,活跃于幕府末期的京都,负责管制以打倒幕府为目的的浪士的剑客集团。冲田总司应该是当时新撰组一番队队长,天才剑士。这个男人却说,我就是冲田总司。这根本不可能。首先穿越时空回到过去就不可能,更不用说变成冲田总司了。
到底开什么玩笑?我正准备这么问,我又被自己惊呆了。我的脑海里,不知为何浮现出了他们两人的名字——近藤勇和土方岁三。而且,他们分别是新撰组的局长和副长这件事我也知道了。
“看来你还有点累,总司。你今天先好好休息。”
他们已经认定了我是冲田,说完这些,就走出了屋子,剩下我一个人呆呆地留在房间里。
开什么玩笑!这一定是一场梦。那场交通事故之后,我肯定被送进了医院,这一定是我在医院的病床上做的一场噩梦。我实在无法接受这种情况,于是起身,朝屋外走去。
但是,打开拉门,走到外廊的时候,我又被眼前的景象惊呆了。面朝外廊的院子里,大概有十来个年轻人正挥舞着木刀在练功,而且他们都是武士打扮。还有那面红底的“诚”字旗。
怎么可能!这些景象我都是第一次见到。尽管如此,这一切我却似乎都有印象。这里就是新撰组的壬生屯所。原本不应存在的记忆告诉我。我恍然大悟。虽然不知基于什么原理,但是,我真的已经穿越时空,成为了新撰组的剑士,冲田总司。
5 時の散歩者
その夜、混乱する頭を静めようと、俺は静まり返った屯所の中庭で、月を見上げていた。夕食を持ってきた隊士の話しを総合すると、今は当時の年号で言うところの、元治元年で、単なる浪人達の集まりでしかなかった新撰組が、京都の治安役を務めていた会津藩から認められ、ようやく正式に活動し始めたころらしい。しかし、そんな話を聞かされても、俺はまだ半信半疑だった。この状況に論理的な説明を求めるとしたら、全てが俺の頭の中で起こっている妄想という答えぐらいだ。だが、それにしては余りにも全てがはっきりし過ぎていた。そもそも、妄想を思い描く人間が、その妄想の中で己の正気を疑ったりするだろうか。
「もっと考えるんだ。きっと何か説明がつくはず」そう呟いた瞬間だった。背後に人に気配を感じ、振り返ると、なんと、茂みの影にあの老人が立っていたのだ。
「あんたは?」間違いない。それは事故現場で見た黒衣の老人だった。まさか。
「これは全てあんたが仕組んだ事なのか?あんた一体!」
困惑する俺を見て、彼は説明をし始めた。
「今回は運悪く、不幸な偶然が重なったようだ」彼は時の散歩者。時を旅する者だという。
「過去と未来、私はあらゆる時代、あらゆる場所を旅してきた。しかし、時折移動の際に起こる時空の波に、精神を同調させてしまう者が現れる。今回のお前さんの様に」
あの事故が引き金となって、偶々時空に歪が生じ、俺の精神は時間の波に巻き込まれてしまったのだと。そして、行き場を失ったまま、偶然にも、150年前の沖田総司の者と一体化してしまったのだという。
老人の話は普通だったら信じられる様なものではなかった。だが、ほかに説明しようが無いのも事実だった。何より、俺は現にこうして、沖田総司となっているのだ。
「さあ、私と一緒に元の時代に戻るのだ。時の流れに、余計な負荷をかける訳にはいかん」
この理解不能の状況から抜け出せる。老人の言葉に俺はほっとした。だが、老人が差し出した手を握ろうとして、一つの疑念が浮かんだ。まさかとは思うが、ありえない話ではない。
「一つだけ教えてくれないか?あの事故の後、元の時代の俺はどうなったんだ?」
すると、俺の問い掛けに答える代わりに、老人は黙って首を横に振った。やはりそうなのだ。あんな大事故で無事で済む訳が無い。
「死ぬことが分かって戻るとはね。やっぱりあんた死神だったな。そう言う事なら、俺は戻るつもりは無いよ。あの世に行くぐらいだったら、他人の体で生きた方がまだましだ」
老人から離れると、俺は強い口調で言い放った。それに対して老人は静かに答えた。
「沖田総司もいずれ死ぬ」
歴史通りなら、沖田総司が、若くして結核で亡くなることは知っていた。それでも今すぐに死ぬよりは、僅かな間でも、生きる方が増しに決まっている。
「そんなことは百も承知だ。」
だが、老人はそんな俺の拒絶の言葉にも、顔色一つ変えなかった。
「全てを決めるのはお前さん自身だ。ただし…」
まるで俺の答えを予期していたかのように告げると、老人は、最後に一言だけ付け加えた。もしも気が変わることがあったら、いつでも近くの神社に来るがいいと。
その次の瞬間、突如周囲の物音が聞こえなくなったかと思うと、老人の姿はまるで煙にでも変わったかのように、俺の前から消えていた。
「気が変わったら…そんな事ある訳が無い」
再び、虫の音が響き渡るまで、俺は暫く、その場に立ち尽くしていた。そして、その翌日から、沖田総司としての俺の人生が始まった。
当晚,为了让混乱的头脑冷静下来,我在屯所寂静的庭院里赏月。把送晚饭的队员的话综合起来就是:现在按当时的年号应该是元治元年,当时还只是浪人集团的新撰组,好不容易才获得了负责京都治安的会津藩的认可,刚刚开始正式活动。但是,就算听了这些话,我还是半信半疑。如果一定要给现在的状况一个合理的解释,那就有这一切不过是我心中的幻想。可如果真是幻想,这一切却又有些过于真实了。再说,幻想中的人,会怀疑自己的精神是否正常吗?
“再仔细想想。一定能找到什么解释的。”就在我这么低语的瞬间,感觉到背后有人,一回头,就看到那个老人站在树影间。
“你是?”没错。就是那个出现在车祸现场的黑衣老人。难道!
“这些事都是你一手造成的吗?你到底!”
他看着困惑的我,开始慢慢讲述事情的缘由。
“这次似乎有些不走运,不幸的偶然重叠了。”他说他是时间的散步者,旅行于时空中。
“从过去到未来,我一直穿行于各种时代,各种空间。但是,移动时时空会产生波动,有时会因此出现精神与时空波动同调的人。就好像你这次一样。”
他说因为那场事故,时空偶然产生歪曲,而我的精神被卷入了时间波中。然后,就这样失去方向,偶然与150年前冲田总司的精神一体化了。
通常情况下一定不会有人相信老人的话,但是,现在的情况也没有其他的原因可以说明。更何况,我现在的的确确成为了冲田总司。
“来吧,跟我一起回你原来的时代。不能给时间之流增加多余的负荷。”
可以离开这种不可理解的状态了。听完老人的话,我放心了。但是,在我准备握住老人手的时候,我心里浮上来一个疑问。虽然觉得不太可能,但也不是完全没有可能。
“能回答我一个问题吗?那场事故之后,原来那个时代的我到底怎么样了?”
结果,老人没有回答,只是默默地摇了摇头。
果然是这样。遇到那么大的车祸,怎么可能没事。
“明知道回去就意味着死怎么可能回去呢。我看你果然就是死神。既然这样,那我就不回去了。与其去死,还不如借着他人的躯体活下去。”
我退了几步,语气坚决地说道。而老人却平静地说。
“冲田总司总有一天也会死的。”
如果真如历史所说,冲田总司应该会因肺结核英年早逝。就算之样,哪怕活不了多长时间,也比现在立即死掉要强。
“这我一清二楚。”
但是,老人听到我这些坚决的回绝,脸色依然没有丝毫改变。
“一切都由你自己来决定。只不过…”
听起来老人似乎早已料到我会这么回答。说过这句话之后,老人最后又加了一句。
“如果哪天你改变主意了,随时可以到附近的神社来找我。”
下一个瞬间,周围的声音突然消失,老人像变成烟雾一样,从我眼前消失了。
“如果改变主意…怎么可能。”
我呆呆地伫立在原地,过了不久,虫鸣声再次在我耳边响起。然后,第二天,我作为冲田总司的人生开始了。
6 沖田として
幕府の力だけでは抑えきれなくなった、過激な攘夷運動を行う不逞浪士達を取り締まる。それが、京の都での新撰組の役割だった。その為、昼は不逞浪士が狼藉を働いていないか、市中を見回り、役目が無い時は、屯所で新米隊士達に稽古をつける。それが新撰組隊士となった、俺の日課だった。別に本物の沖田総司に成り代わろうと思ったわけじゃない。ただ、この時代の人間ではない俺に、外に行く当てがある訳も無く、新撰組の沖田総司として生きるしかなかっただけだ。
最初のころは、何時正体がばれるかとひやひやしていたが、すぐにそれが杞憂だと思うようになった。実際、沖田が子供の頃から付き合いがある、近藤さんと土方さんも、俺の演じる沖田総司に対して、違和感を覚えていないようだった。当然と言えば当然かもしれない。変わったのは中身だけで、沖田総司としての外見はまるで変わっていないのだ。更に俺の体には、それまでの沖田総司の記憶や知識がある程度残されていたため、生活習慣の違いなどでもぼろを出すことも無かった。ただ、やはり自分とは、余りにもかけ離れた人物を演じるのには限界があった。もともと、人付き合いが苦手な俺は、何かに付けて声をかけてくる隊士達への対応に四苦八苦する羽目になってしまったのだ。
天才剣士という後世のイメージとは異なり、史実の沖田はいつも冗談ばかり言っている、ムードメーカーのような存在だったらしい。その為、隊士達は一様に沖田を慕っていたのだ。だが、そんな俺の力になってくれる人物がいた。それは山南さんだった。
山南敬助、新撰組の副局長であり、北辰一刀流の免許皆伝の腕前ながら、教養もあり、穏やかで、人当たりのいい性格の人物だった。ある日、その山南さんが、俺に声をかけてきたのだ。
「沖田君、余り元気が無い様だけど、何か悩み事でもあるのかい?」
いつもの様に、近所の子供達のおにごっごに付き合わされていた俺は、その声に慌てて振り返った。するとそこに、からかう様な笑みを浮かべた山南さんが立っていたのだ。
「そんな事ありませんよ。少し疲れが溜まってるだけです」
慌てて首を横に振って否定する。まさか何か感づかれたのだろうか。
「そうかい。いや、このところ、君が近藤さんたちといるところを余り見ないからね」
言葉自体は柔らかかったが、山南さんは、正体がばれないように、近藤さんや土方さんを避けている俺を鋭く見抜いていた。もっとも、局長の近藤さんや副長の土方さんと、江戸にいた頃からの知り合いで、本物の沖田とも古い付き合いがある人物なのだから。俺の微妙な変化に気づくのも当然と言えば当然だったのかもしれない。
「なにを悩んでいるにしろう、無理はしないことだ。人は思うままにしか行動できない。なすべきと思う事をすればいいさ。何より君は新撰組にとって無くてはならない人物だからね」
それだけ言うと、山南さんは「邪魔したね」とその場を去っていた。
もしかすると、単純に悩みを抱えているように見えた俺を励ますための台詞だったのかも知れない。だが、山南さんの言葉はなぜか俺の心に響いた。この男だったら、俺が味わってきた孤独も理解してくれるかも知れない。そう思わせる何かがあったのだ。それがきっかけとなり、俺は自然と山南さんと行動を共にするようになっていた。ただ、俺が山南さんと親しくする事を警戒する人物がいた。副長である土方さんだ。
监管那些幕府无暇顾及的,进行着过激攘夷运动的无法无天的浪士。这就是新撰组在京都的任务。为此,白天要在市内巡逻,以防止无法无天的浪士进行暴力活动。没有任务的时候,就在屯所内指导新人训练。这就是我成为新撰组队员之后的日课。其实我从来没有想过要代替冲田总司,只是我不属于这个时代,也没有别的去处,只好作为新撰组的冲田总司活下去。
刚开始的时候,我成天提心掉胆,担心自己的身份被揭穿。不过很快就明白我只是杞人忧天在。因为,就连与冲田从小一起长大的近藤和土方也从来没有对我所扮演的冲田总司产生过怀疑。这也许是理所当然的。灵魂虽然改变了,但是从外表看来冲田总司没有丝毫变化。更何况我的体内,还残存着一些冲田总司的记忆和知识,这样便不会在生活习惯等方面令人产生怀疑。不过,一直扮演一个与自己完全不一样的人物,始终会有所局限。原本我就不擅长交际,而队员们有点什么事都会来找我。单是应对他们,就已经弄得自己疲惫不堪。
与后世所流传的天才剑士形像不同,史实中的冲田似乎是一个喜欢开玩笑,经常扮演活跃气氛角色的人。因此,队员们都非常亲近冲田。不过当时,幸好有一个人鼓励了我,这个人就是山南。
山南敬助,新撰组副局长,得到北辰一刀流真传的高手,是个很有教养,性情温和,待人亲切的人。
有一天,山南突然问我:“冲田,最近见你没什么精神,是不是有什么烦恼?”
我当时正像平时一样,跟附近的小孩子们一起玩捉鬼游戏,听到声音,慌慌张张回过头,就看山田到一脸玩笑似的表情站在那里。
“没这回事,只不过是有点累而已。”我急忙摇头否认。他该不会是察觉到什么了吧。
“是吗?哎呀,最近很少见你跟近藤他们在一起呢。”
他的这些话语本身非常柔和,我却听得出来,山南看出我在刻意回避近藤和土方。我不想让自己的身份被识破,而局长近藤和副长土方跟真正的冲田在江户时就认识,他们俩是冲田的老朋友了,察觉到我的微妙变化也并非完全没有可能。
“不管有什么烦恼,都不要太勉强自己。人们只能做出自己想到的事。只要做自己该做的就够了。不管怎么说,对新撰组来说你是不可或缺的人物。”
说完这些,山南说了声“打扰你了”就走了。
可能,他看出我有烦恼,只是单纯地为了鼓励我才说的这番话。但是,不知为何,他的话却在我的心里产生了共鸣。这个男人,说不定能理解我内心一直以来的孤独。他的话语里有些什么让我产生了这样的想法。自此之后,我很自然地开始与山南一同行动。不过,有一个人在担心我与山南过于亲近。这个人就是副长土方。
7 不和
そもそも、副長という地位にある土方さんは、新撰組という組織を鉄の掟によって、実質的に纏め上げている人物であり、穏やかで、優しい山南さんとは対照的に、どちらかと言えば、口数も少なく、何よりも規律を重んじるタイプだった。その為二人は何かに付けて衝突することが多かった。もっとも、俺の前でお互いの事を悪く言うことは少なかったが。
「総司、手前、最近妙に山南さんとばかりつるんでるそうだな。別に誰かとつるもうが構わないが、近藤さんを蔑ろにする様なまねだけはするなよ」
付き合いを避けようとしている俺の行動に気づいたのか、ある時、廊下で擦れ違いざまに、そう土方さんがくぎをさしてきた。
俺が局長である近藤さんの意向よりも、副局長の山南さんの考えを重視しているように見なされたのだ。しかし、そう思われても仕方が無かったのかもしれない。俺が近藤さんと土方さんを避けるようになったのは、正体がばれる事を恐れただけではない。新撰組という組織を維持するために、規律を立てに、冷徹であり続ける土方さんのやり方は現代人の俺にとって、受け入れ難いところがあったからだった。そして、そんな土方さんを黙認する局長の近藤さんにも俺は不満を持っていた。
「歳のやつは隊をまとめるために、必死になってくれている。たとえそれが、悪役と見なされることになってでもだ」
何かあるたびにそう語る近藤さんは、俺からすれば、局長という地位にありながら、自ら動こうとせず、ただ綺麗事を言っているだけにしか思えなかった。
そもそも近藤さん達が多摩の田舎から、京へ出てきた目的は単純なものだった。徳川家に仕える直参の家臣となり、一旗揚げる。それが目的だった。本当に国を憂いだ訳でも、世直しを考えているわけでもない近藤さん達の行動は、常に論理的に話を進めようとする山南さんのやり方と比べても、余りにも世俗的で、単純に感じられるものだった。だが、暫くして、そんな彼らへの見方が大きく変わる出来事が起こった。
原本身居副长一职的土方就是一个严格执行铁则,掌握着新撰组的实权的人,他话很少,最为看重纪律,与为人温和亲切的山南正好形成对照。因此两人经常会为一些事情发生冲突。不过,他们很少在我面前数落对方的不是。
“总司,你最近好像老是跟山南混在一起啊。你跟谁混在一起我管不着,不过你可千万别把近藤不当一回事。”
也许是察觉到我刻意回避他们的行为,一天,在走廊下擦肩而过的时候土方叮嘱我。
是因为在他看来,比起局长近藤的意见,我更重视副局长山南的意见吧。但是,他会这么想也在情理之中。我之所以刻意回避近藤和土方,不仅仅是因为担心身份被识穿。还有,为了维持新撰组这个组织的运行,土方那种以纪律为准绳的冷酷做法对于我这个现代人来说,实在难以接受。进而对于默认土方这种做法的局长近藤也产生了不满。
“岁三那家伙为了维护这个队伍,非常拼命。就算一直当恶人他也不在乎。”
一旦出什么事近藤就会这么说。但是在我看来,他身居局长之职,却从不想要做些什么,只会说些漂亮话。
原本近藤他们从多摩的乡间来到京都的目的就很单纯。成为直接隶属于德川家的家臣,闯出一番事业。”这就是他们的目的。在我看来,他们这种既不是因为忧国,也不是因为希望改变世间所做出的行动,相对于山南那种以理服人的处事方式,实在是过于庸俗简单了。但是没过多久,发生了一件事,彻底改变了我对他们的看法。
8 池田屋事件
元治元年6月、新撰組での生活になり初めて、1ヶ月以上が経とうとしていた頃、一つの事件が起きた。
偶々捕らえた攘夷派の浪士が、驚くような陰謀を白状したのだ。長州をはじめに肥後、土佐といった攘夷派の脱藩浪士を中心とした集団が、京の町に火を放ち、その騒ぎに乗じて、幕府派の公家達を幽閉し、御所から、帝を連れ出そうとしていると言う。この企てを知った近藤さんは、すぐさま市中に潜伏する浪士達を捕らえるため、直ちに隊士達に出動を命じた。早速、近藤隊と土方隊の二つの隊に分かれて、京の街の繁華街をしらみづぶしに探索する。その結果、怪しい宿を発見したのは俺の加わった、近藤隊だった。
「歳の隊を待っていては気づかれる、総司、行くぞ!」
数名の隊士を表と裏の出入り口に配置し、逃げ出してくる敵に備えさせると、近藤さんは、俺のほかに、永倉さん、藤堂さんと言う腕利きだけを率いて、一気に宿の中へ突入した。
「ご用あるためである!」
そう叫ぶと、近藤さんは宿の亭主の制止を振り切って、一気に二階への階段を駆け上がる。すると、予想通りそこには、20人ばかりの浪士達が集めていた。一瞬驚きながらも、たちまち抜刀する浪士達。
「手向かい出せば容赦なくきる!」
近藤さんの声が合図になったかのように、たちまち切り合いが始まった。緊張が走る。確かに屯所での稽古では、もともとの沖田の才能ゆえか、誰にも負けなかった。だが、実戦となれば話は別だ。ところが不思議なことに、切りかかってくる相手を前に、体が勝手に動いた。踏み込みざまに最初の一人を切り捨て、そのまま返す刀で、二人目の胴を切る。当然、人を切ったのは初めてだった。だが、それ以上に俺は自分の動きに驚いていた。竹刀さえ握ったことの無かった俺が、まるで剣の達人のように動けるのだ。しかし、数名を切ったところで、突然激しく咳き込み、俺は床に片膝をついて蹲ってしまった。口を押さえた手のひらに、べったりと血がついていた。俺の脳裏に、結核の二文字が浮かんだ。そうか、だが、何もこんなときに…その隙を見逃すはずも無く、男達の一人が切りかかってくる。
辛うじて刀で受け止めたものの、壁際まで強引に押し込まれてしまった。意識が遠のきながらも、徐々に相手の刃が近づいてくるのが分かる。
「総司、無事か?」
刹那、近藤さんの声が響く。俺が防いでいた男を一刀の元に切り捨てると、近藤さんは俺を庇いながら、残りの浪士達を血祭りにあげていく。
そんな近藤さんの活躍を見ながらも、俺の意識は再び混濁の中へと落ちていった。
元治元年6月,我在新撰组生活一个多月之后,发生了一件事。
偶然被抓的一个攘夷派浪士,供出了一个惊天阴谋。以长州为首,肥后、土佐等脱藩浪士为中心的集团计划在京都放火制造混乱,乘机囚禁幕府派重臣,将天皇带出皇宫。听到这个阴谋,近藤立即命令所有队员出动,逮捕潜伏于市内的浪士。很快,我们分成近藤队和土方队两队,对京都繁华地段开始进行逐一排查。结果,我所在的近藤队首先发现了可疑客栈。
“在这里等岁三的队伍过来会被察觉,总司,我们上!”
安排好了数名队员守在前后门的出口以防敌人出逃之后,近藤就带领着我、永仓、藤堂等几个武艺比较高的人冲进了客栈。
“我们有公事要办!”
近藤一边叫一边摆脱店主的阻拦,一口气朝二楼冲了上去。果然,有20来个浪士集中于此。他们愣了一下,立即回过神来抻手拔刀。
“谁敢还手就地处死!”
近藤的声音仿佛是信号一般,两队人立即展开厮杀。我全身的神经紧张起来。确实,在屯所训练里,也许是由于冲田本身的才能吧,我从来没有输给任何人。但是,实战与训练完全不同。不可思议的是,面对冲提刀冲过来的敌人,我的身体不由自主的动了起来。一进门我立即斩杀了一人,然后回刀顺势斩向第二个人。当然,这是我有生以来头一次杀人。但是更加让我震惊的是我的动作之娴熟。我这个以前连竹刀都没碰过的人,挥起刀来简直就是一个剑术高手。但是,斩杀数人之后,我突然开始剧烈地咳嗽,不由得单膝跪地。捂住口的手掌上,留下了一滩浓血。我的脑海里立即浮现出两个字——结核。这样啊,但是,为什么偏偏这个时候…敌人怎么可能放过这个绝好的机会,马上就有一个男人提刀向我砍来。
好不容易才抵挡住对方的刀,我终于还是被直逼到墙角。意识渐渐开始模糊,但我仍然清晰地知道,对方的刀在一点点向我逼近。
“总司,你没事吧?”
突然,近藤的声音响了起来。他一刀斩杀了与我抗衡的男人,然后一边护着我一边将剩下的浪士们斩杀殆尽。
看着近藤挥舞着刀,我的意识再一次陷入混沌中。
9 同志
「近藤さん」
気づくと、近藤さんが俺の顔を覗き込んでいた。その背後では、重傷を負った浪士達のあげる呻き声が聞こえる。どうやら、俺が倒れている間に、切り合いは終わったらしい。
「馬鹿野郎!連中に切られたのかと思ったぞ。心配掛けやがって!」
そう怒鳴りつける近藤さんの目には、最初に会ったときと同様に、涙が浮かんでいた。
「泣いてるんですか?まさか怪我でもしたんじゃないでしょうね。」
妙な気恥ずかしさにおどけて見せたものの、俺には分かっていた。あの時と同じく、近藤さんは本気で俺のことを心配していたのだ。
「いいか、総司。俺達より先に死にやがったら、承知しないぞ!」
そんな近藤さんに、俺は返す言葉を持たなかった。確かに近藤さん達は大きな志願を持たず、己の欲のために動いていた。ただ、それでも彼らは、純粋に仲間との絆を信じていた、その相手の中身が変わったとも知らずに。それを愚かで単純だと切り捨てるのは容易だった。だが、涙を浮かべた近藤さんの顔を見てしまった俺は、それを笑うようなまねなど出来なかった。それは純朴で、本当に心からの涙だった。
もしかすると、俺は本当に掛け替えの無い仲間を手に入れたのかも知れない。偽りでもいい、俺は沖田総司として生きたい、たとえ結核で命を落とすまでの短い間だったとしても。この事件をきっかけに、俺の心に、そんな思いが生まれ始めていた。
池田屋事件。後世にそう伝えられた騒動によって、新撰組は京の都を大火の危機から救ったとして、一躍その名を世間に轟かせることになった。そして、事件を境に、俺は以前よりも近藤さん達と話をすることが多くなっていた。
俺のために本気で泣いてくれた近藤さん、俺が必要だと言いてくれた山南さん、更には一番隊の隊長として、俺を慕ってくれる隊士達。誰かに頼りにされ、必要とされる、その喜びを知り、俺は初めて仲間というものを意識するようになったのだ。何時しか俺は彼らと過ごすことに、不思議な安らぎを感じ始めていた。ずっと孤独だった俺が、沖田総司となったことで、ついに求めていたものを手にすることが出来たのだ。共に泣き、共に笑い合える仲間達だ。新撰組の仲間達と共に時代を駆け抜けたい。それが沖田に転生した俺にとっての、密かな目的となろうとしていた。幸い、あれから結核の症状は現れず、小康状態になっている。俺にはまだ時間がある、そう思っていた矢先、再び事件が起こった。山南さんが脱走したというのだ。
“近藤。”
醒来的时候,近藤正盯着我的脸。他的背后传来身受重伤的浪士们的呻吟。看来,在我晕倒的这段时间,战斗已经结束了。
“你个混蛋!我还以为你被人砍了。又让我担心!”
近藤怒吼着,在他的眼睛里,跟第一次见面的时候一样,含着泪水。
“你在哭啊?你该不会是受伤了吧。”
我有些尴尬地开着玩笑,不过心里清楚,跟当初一样,近藤是真心地担忧我的安危。
“你听着,总司,你要是敢比我们早死,我决不会放过你的!”
面对这样的近藤,我再也说不出话来。
近藤他们或许真的没有什么雄心壮志,他们所有的行动只是为了实现一己私欲。不过,尽管这样他们依然纯粹地相信朋友之间的羁绊,即使连这个朋友的灵魂已经改变都没察觉。割舍他们这种愚蠢而单纯的感情似乎很简单。然而,看到近藤脸上浮现出的泪水,我却怎么也笑不出来。那是纯朴至极的,发自内心的泪水。
说不定,我真的已经找到了无可替代的朋友。哪怕是假的也好,我希望可以作为冲田总司活下去。哪怕很快就会因为肺结核死去,哪怕这段时间很短暂。发生这件事之后,这种想法开始在我的心里扎根。
池田屋事件。通过被后世如此称呼一场骚乱,新撰组拯救了京都免受大火之灾,一夜之间名动天下。然后,以这件事为契机,我跟近藤他们之前的话也比以前多了起来。
真心为我哭泣的近藤,说我不可或缺的山南,还有把我当作一番队队长尊敬的队员们。现在我知道,原来被人信赖,被人需要是多么令人高兴的事。我第一次开始明白朋友的含意。不知从什么时候起,跟他们在一起的时候,我开始感觉到一种不可思议的安宁。一直孤独的我,在成为冲田总司之后,终于得到了我梦寐以求的东西,那就是可以一起哭一起笑的朋友。真想跟新撰组的朋友们一起迎接新时代。这渐渐成了转生为冲田之后的我心里一个隐密的目的。幸好,那件事之后肺结核的症状没有再出现,病情一直很平稳,我还有时间。但是就在这时候,又发生了一件事。山南出逃了。
10 山南脱走
話を聞いた時は信じられなかった。あの鉄の掟に山南さんが背くなんて。脱走は新撰組の大紀によって切腹の処分だ。理性的な山南さんが、副局長という地位にありながら、そんな暴挙に出るあんて理解できるはずが無い。もっとも、山南さんが今の新撰組に不満を持っているのは知っていた。新撰組が幕府から認められるようになっていこう。今後の方針をめぐって、山南さんは土方さんと衝突することが増えていたからだ。
「頼むから逃げ切ってくれ」
追跡の任務を与えられ、恐らく江戸に向かったであろう山南さんを馬で追いかけながら、俺は彼がこのまま見つからないことを祈り続けていた。だが、その思いは意外な形で裏切られることになった。
大津の宿場町まで来たときだ。ある宿の前で、俺は山南さんに呼び止められたんだ。
「沖田君、遅かったじゃないか」
馬を休ませられる場所を探していた俺は、宿の前で、ニコニコと笑みを浮かべて座っている山南さんを見て、ぎょっとした。
「おかけで少しばかり、体が冷えてしまったよ」
そう言って、おおげさに体を摩って見せる姿は、まるで、少しばかり散歩にでも出掛けていたかのようだった。
「どうしてです?!なぜこんなまねを?!」
しかし、そんな俺の問いに対して、山南さんは、軽く笑みを浮かべただけだった。
「『どうして』か。話したいことも色々あるだろうが、今日はもう遅い。ここで宿を取って、出発は明日の朝にしようじゃないか」
そう言うと、山南さんはそうすることが当然というように、さっさと宿の中に入ってしまった。やもなく俺も、その後から宿の入り口をくぐる。脱走しておきながら、まるで逃げるつもりなど無かったかのような山南さんの態度に戸惑いながら。
「どうして脱走なんか?教えてくれますよね」
その夜、薄暗い宿の一間で、山南さんと酒を酌み交わしながら、俺は湧き上がる疑問をぶつけずにはいられなかった。
「なぜなんです?どうして?」
同じ問いを繰り返す俺に、ふっと山南さんは自嘲の笑みを浮かべた。
「今の新撰組にとって、私の存在が邪魔だからだよ」
そう言って、暫く黙ったまま、宿の天井を見詰めていると、やがて、山南さんは溜息まじに、再び口を開いた。
「沖田君、私はね、君達のことをどこかでずっと見下していた。学もなく、多摩の田舎剣術者でしかない君達を。しかし、同時に羨ましかった。君達の素朴な情熱が、理屈や計算を抜きにして、単純になにかを信じることが出来る純粋さが、私が試衛館道場入りびたり、君達と共にいたのもその為だ」
話を続ける山南さんの視線はまるでどこか別な場所へと向けられているかのようだった。そう、今は失われてしまった、懐かしい故郷でも見るかのように。
「そして、その絆こそが新撰組のよさであり、強さなんだと私は思っている。だが、その絆に綻びが生まれようとしている。沖田君、例えば君だ。君は私に遠慮して、近藤さんや土方君と、距離を置いているのではないか。自分と土方さんの対立に、ほかの隊士達を巻き込みたくなかった。一度絆が解けてしまえば、新撰組はばらばらになってしまうだろう。だからこそ、今の自分が新撰組のために出来ることは、自ら退くことだけなのだ」と、新撰組という組織の強さを守るために。
「沖田君、君に新撰組を大事に思う気持ちがあるのなら、忘れないでくれ、君らの強さの礎となっている者を」
表情は陰になって読み取ることが出来なかったが、そう言葉を結んだ山南さんの声からは、固い意志が感じられた。
その決意を前にして、俺はもはや何も問いかける言葉を持たなかった。
そして、山南さんが腹が切ることになったのは、その翌日のことだった。
听到这个消息时我简直不敢相信自己的耳朵。山南怎么可能会违背那个铁则。按新撰组的纪律,擅自离队会被切腹。我实在无法理解理性的山南,身处副局长的他为何会作出这种鲁莽的举动。尽管,我知道山南对如今的新撰组心存不满。想办法让幕府认可新撰组。围绕今后的方针,山南与土方发生冲突的次数不断增加。
“拜托你逃掉吧。”
我觉得山南可能前往江户,接受追击的任务之后,我策马向着江户方向追踪山南而去,并一边在心里默默祈祷,永远不要让我找到他。但是,事情却以一种意外的形式背离了我的期望。
那是在到达大津旅馆的时候。在一家客栈前,山南叫住了我。
“冲田君,你来晚了啊。”
当时我正在找地方让马休息。看着山田一脸笑呵呵的样子坐在客栈前面,我愣了一下。
“等了你这么久,我都有点冷了呢。”
他一边说着,一边夸张地搓着身上。看起来就像是刚刚散完步回来。
“为什么?!你为什么要这么做?!”
但是,面对我的质问,山南只是轻轻地笑了。
“‘为什么’啊。我想你一定还有很多话要说吧,不过现在已经很晚了。今天先在这里住下,明天早上再出发吧。”
说完,山南理所当然似的快步走进了客栈。我也只好跟着他进去了,一面在心里对山南的态度感到疑惑不解。擅自出走的山南,简直没有半点要逃的意思。
“你为什么要逃走?能告诉我吧。”
当晚,在灰暗的客栈中,我一边跟山南喝着洒,一边忍不住说出憋在心里很久的疑问。
“究竟是什么?为什么?”
面对着不断重复着同一个问题的我,山南忽然自嘲地笑了。
“因为对于现在的新撰组而言,我的存在本身就是一个障碍啊。”
说完,他沉默了,看着客栈的天花板。最后,山南叹了一口气,终于继续说了下去。
“冲田君,其实我啊,可能在心底的某个地方一直都瞧不起你们。你们没什么学问,只不过是一群来自多摩乡下的剑客。但同时,我又很羡慕你们。羡慕你们朴素的热情,羡慕你们可以不讲大道理不算计得失,就能单纯地相信别人的那种纯粹。正因为这样,我才会留在试卫馆道场跟你们在一起。”
说这些话的时候,山南的视线仿佛在看着某个遥远的地方。就像,看着那个早已失去的,熟悉的故乡一样。
“而我觉得,这种羁绊正是新撰组的优点,也是新撰组强大的原因。但是,现在这种羁绊正在出现裂痕。冲田君,比如说你吧。你不是因为顾虑我,才会和近藤还有土方保持距离的吗?我不希望因为我与土方的对立,把其他的队员们也卷入进来。队员之间的羁绊一旦离析,新撰组应该会四分五裂吧。正因为这样,现在我能为新撰组做的事,就是自己主动退出。”他这么做是为了维护新撰组这个组织的力量。
“冲田君,如果你真的重视新撰组的话,请你不要忘记那些为了你们的强大而成为基石的人们。”
他的表情被阴影遮住不怎么看得清,但是从山南的声音中,我感觉到了他坚定的意志。
面对着他的这种坚决,我什么也说不出来了。
然后,山南的切腹就是在第二天进行的。
11 不信
慶応元年、2月23日、壬生屯所の奥座敷で、山南さんの切腹が行われようとしていた。
もろ肌を脱ぎ、すっかり腹を切る準備を終えた山南さんを見下ろしながら、俺は祈るような心持で、切腹の見届け役である、局長の近藤さんと、副長の土方さんへと視線を向けた。
そうだ、今ならまだ間に合うはずだ。近藤さんが許すと、一言告げさえすれば。彼らが京の都で、新撰組を創設して2年、山南さんは、それ以前から二人と盟友だった。近藤さんが館長を勤める試衛館道場で、同じ時を過ごした仲間だった。俺はそんな彼らの絆に願いを託した。この土壇場にきて、考えを改めてくれるかも知れないと。だが、ついに近藤さんの口から、切腹を思い止まらせる言葉が発せられることは無かった。
なぜだ、近藤さん?土方さん!俺達は同じ新撰組じゃなかったのか?!苛立ちと質問が胸の中に湧き上がってくる。結局、俺が経験から学んだことは間違っていなかったということなのか。やはり人は簡単に裏切るのだ。と、そんな俺の心中を察したかのように、山南さんが言葉を発した。
「沖田君、誰かを恨んではいけないよ。恨めば君が辛くなるだけだ」
そして次の瞬間、腹に脇差を突き立てる。
「山南さん、ごめん!」
俺はうめくと同時に、刀を振り下ろした。たちまち床に敷かれた白布に鮮血が舞う。こうして、新撰組副局長山南敬助は、32歳の短い人生を終えたのだった。
「総司、はっきり言ったらどうだ、俺が憎いと」
屯所の庭先で稽古を励む俺に、土方さんが声をかけてきたのは、山南さんの切腹から、数日経ってからだった。恐らく顔を合わせる度に、俺が不満そうな表情を見せることが気になっていたのだろう。だが、俺はわざと惚けて見せた。こうなったからには、今さら彼らに自分の内面を晒すつもりなど無かった。
「なぜ俺が土方さんを憎んだりすると思うです?局中法度は絶対でしょう。山南さんもそれに従うことをよしとしていた。誰かを恨んだりするのは筋違いだ。そうじゃありませんか」
そういって俺はわざと慇懃無礼な態度を取って見せた。だが、土方さんは表情も変えず、いつものように察すような視線で俺を見ただけだった。
「ならいい。ただ、一つだけ言っておく。今回の件は、近藤さんではなく、俺に責がある。だから、わだかまりがあるなら俺を憎め。俺は元から、この新撰組を守るためなら鬼になる覚悟だ。誰から憎まれようと構いやしない。総司、例えそれがお前であろうと」
それは開き直ったとしか思えない言葉だった。要は隊のためにならない者は、誰であろうと容赦しないということか。我慢の限界だった。そのストレートの物言いに怒りを覚えた俺は、土方さんを睨み付けると、口を開いた。
「分かりました。そこまで言うなら、教えてあげますよ。ええ、憎いですと思う。どこまでも冷徹になれるあなたが!古い仲間を犠牲にしても平気でいられるあなたが!どうです、これで満足ですか?!」
それだけ言い放つと、俺は土方さんを残して、足早にその場を去った。話を続けていったら、激情に駆られて、何を言い出すか分からない気がしたのだ。
俺は新撰組に、近藤さん達に一体何を期待していたんだ。一つの命が消え、残されたのは、まるで自分が切られたかのような激しい空しさだった。
生まれ変わり、掛け替えの無い友、本当の仲間を得たと思った。しかし、それは全て俺の願望でしかなかったのだ。
庆应元年,2月23日,壬生屯所内厅,山南的切腹即将进行。
露出上半身,山南的切腹准备已经准备妥当。我低头看着山南,一边怀着一丝祈祷的心情把视线转向负责监守的局长近藤和副长土方。
是的,现在还来得及。只要近藤他说一句,放了他的话。他们在京都创设新撰组2年,而山南此前就已经跟他们是盟友。在近藤担任馆长的试卫馆道场里,他们是一同生活过的伙伴。我寄希望于他们之间的交情。说不定在这最后关头,他们会重新考虑一下。但是,近藤最终还是没有开口阻止山南切腹。
为什么?近藤!土方!我们不都是同在新撰组的朋友吗?!愤怒和质问一起涌上心头。说到底,我的人生经历所得出的结论是正确的吗?人们果然可以轻易地背叛。仿佛觉察到了我内心的这种想法,山南开口了。
“冲田君,不要怨恨任何人。憎恨只会让你更加痛苦。”
紧接着,他就把刀刺向自己的腹部。
“山南,对不起了!”
从喉咙里挤出这句话的同时,我的刀砍了下去。地板上铺好的白布上立即染满了鲜血。
就这样,新撰组副局长山南敬助,结束了他32年的短暂人生。
“总司,你干脆把话明说了吧。你恨我。”
土方跟我说这句话的时候,我正在屯所的院子里练剑。当时,山南的切腹已经过了数日。多半是因为每次跟我见面时,我都一副极其不满的表情吧。但是,我却开始装傻。事已至此,我也没打算再让他们知道我的想法。
“你为什么认为我会恨你呢?局中法规不是绝对的吗?山南也只是遵守了而已。我哪有理由去恨谁。难道不是吗?”
我故意带着极其不满的态度以恭维的口吻说出这番话。但是,土方表情一点也没变,只是以他一贯的洞悉一切的眼神默默地看着我。
“那就好。只不过,有句话我说在前面。这次的事,责任在我,与近藤无关。所以,你心里要是真有什么怨恨,只管冲我来。为了保护新撰组,我原本就有成为魔鬼的觉悟。不管谁恨我我都不在乎。总司,包括你在内。”
他这些突然严肃起来的发言,说白了就是“只要对队伍没用的人,不管是谁也决不留情”。我再也忍不住了,他这种直接的措词让我怒火中烧。我狠狠地盯着土方,开口说道:
“我明白了。既然你这么说,那我就告诉你。不错,我恨你!恨你这种冷酷无情!恨你居然可以对老朋友的牺牲无动于衷!怎么样,这样你满意了吧?!”
说完这些,我急忙快步离开,留下了土方一个人。要是继续说下去,过于激动的我,真不知道还会说出些什么来。
我到底对新撰组,对近藤他们在期待些什么啊。一个生命的消失,所留下的无限空虚仿佛要把我劈开了一般。
原以为我已经重生了,原以为我已经找到了无可替代的挚友,找到了真正的同伴。但原来这一切,只不过是我的一厢情愿。
12 絆
その夜のことだ。見回りから帰ってきて、床に入ったものの、昼間のやり取りが頭を離れず、俺はなかなか寝付くことが出来なかった。一層俺も山南さんのように脱走してしまおうか。ふっとそんな考えが頭をよぎる。薄情な裏切り者達とこれ以上を一緒にいたくは無かった。とにかく、ここから離れるのだ。いずれ俺の体は病に蝕まれていくだろうが、そうなったときのことは後から考えればいい。いいさ、なるようになれた。
覚悟お決めて、そっと部屋を抜け出すと、俺は誰にも見つかれないように、屯所の外へと向かった。だが、その途中だった。足音を殺し、廊下を歩いているところで、話し声が聞こえてきたのだ。
「歳、本当にあれでよかったのか?総司のやつ、完全に誤解しているぞ」
襖の向こうから聞こえたその言葉に、俺は思わず足を止めた。
「この声は…近藤さん。それじゃ相手は土方さんか。」
盗み聞くつもりは無かった。ただ聞こえて来た名前に、俺はその場から動けなくなってしまった。
「お前はあれ程山南さんに腹を切ることを思い止まらせようとしたというのに、これではまるで反対だ。そもそも、山南さんは新撰組をまとめる為に自ら死を選んだ。お前と総司が対立することなど、望んではいなかったはずだ」
そんな!近藤さんの言葉に、俺は思わず声を漏らしそうになった。山南さんが自ら死を望んでいたのは本人の口から聞いて知っていた。しかし、その山南さんを、あの土方さんが救おうとしていたというのか。俺はその事実に驚き、更に、次に続く会話に激しく動揺した。
「分かっているさ。それでも誰かが言う必要があった。あいつは新撰組の一番隊隊長としての責任がある、何時までも落ち込んだままにさせて置く訳にはいかないだろう。それに俺は、これ以上辛気臭い面でいるあいつを見たくなかったんだよ。ああやって派手に俺を憎んでくれた方がまだましだ。」
「すまない、歳。またお前だけは悪人にしちまった。」
「なに、大丈夫だ。総司なら、きっと何時かは理解してくれる。」
「あいつはそういうやつだ」
そう言って近藤さんが笑う声が聞こえた。それは共に剣の腕を磨いた、道場時代からの仲間にしか見せない笑い方だった。相手を信じきった笑み、近藤さんがいかに、沖田総司という人間を信頼しているかの証だった。
そこまで聞いて、俺はその場を離れた。
「くそっ!なんて馬鹿なんだ。」
昼間の土方さんの言葉は全て演技だった。それも、俺を挑発して、やる気を出させるための。結局、何も分かっていなかったのは俺のほうだったのだ。俺は、近藤さん達が仲間である山南さんを裏切ったと思っていた。だが、実際には違った。そもそも、俺に彼らを非難する権利など、初めから無かったのだ。むしろ裏切っていたのは俺だ。ふっと、山南さんの言葉が脳裏に浮かぶ。新撰組の強さは、理屈や計算を抜きした、純粋さに結ばされていることだと。しかし、俺はそんな純粋さを逆手に取り、彼らが最も信頼する相手の振りをして騙し続けている。
同じだ。かつて自分は、親友と思っていた相手に裏切られ、人に心を閉ざすようになった。今の自分は、あのときの相手と何が違うというのか?ふっと浮かべかけた考えを慌てて打ち消す。確かに近藤さん達を騙しているのは、気分のいいものじゃなかった。しかし、ほかに選択肢は無い。どうしようもない話なのだ。そもそも、本物の沖田じゃないと話したところで、近藤さん達にとって何の意味がある?偽者も本物も無い、既に俺以外に沖田総司はいないのだから。でも、果たして本当にそうなのだろうか?
当天晚上,我巡逻完回来,我躺在床上,脑子里一直想着白天的争吵,怎么也睡不着。干脆我也像山南一样出逃算了。脑子里突然冒出这个念头。我实在没办法再跟这群无情的叛徒继续呆在一起。不管怎么样,先离开这里。总有一天我的身体会被病魔侵蚀,不过这件事以后再考虑。就这样吧。车到山前必有路。
下定决心之后,我轻轻走出房间,偷偷地向屯所外走去。但是,就在途中,就在我小心翼翼地穿过走廊的时候,听到有人说话。
“岁,真的就这样了吗?总司那家伙,完全误会你了。”
听到从拉门的后面传来的这句话,我不禁停住了脚步。
“这声音是…近藤。这么说另一个人应该是土方了。”
本来我也没有打算偷听,只是听到我自己的名字之后,我就挪不开脚步了。
“你当初那么苦口婆心地劝山南打消切腹的念头,这样不是正好反过来了吗?再说,山南自己选择死是为了新撰组的统一。他也不希望你和总司对立。”
“怎么可能?”听到近藤的话,我差一点叫出声来。山南曾经跟我说过是他自己选择死的,这一点我清楚。但是,土方原来曾经尝试过救山南?我被这个事实震惊了,接下来的谈话更加剧了我的动摇。
“我知道。但是有些话总得有人跟他说才行。他肩负着作为新撰组一番队队长的责任,不能总让他这样一直消沉下去吧。何况,我出看够他成天一副焦燥不安的样子了。就让他这样发泄出来反而更好。”
“对不起,岁。这次又让你当恶人了。”
“没什么,放心吧。以总司的为人,总有一天会明白的。”
“那家伙就是这种人。”
我听见近藤笑着说道。这是只有一起练剑,一起从道场时代走到现在的朋友才有的笑声。是完全信任对方的笑声。那是近藤对冲田总司完全信赖的证明。
听到这里,我就离开了。
“该死!我怎么这么蠢!”
白天土方的那些话全都是在演戏。而且是故意向我挑衅,目的是让我振作起来。说到底,什么都不懂的人只有我。我以为近藤他们背叛了朋友山南,而实际上不是。原本我就没有责备他们的资格,甚至可以说背叛的人是我。突然,山南的话语在我的心中响起。新撰组的强大,就是因为那种不讲大道理不算计得失的那份纯粹把人们团结在一起。但是,我却反而利用了这种纯粹,我一直假装成他们最信任的人,欺骗着他们。
一样的。以前我曾经被自己认为的挚友背叛,因而才会对人紧闭心门。现在的我,与当时欺骗我的那个人有什么区别?我慌忙打消脑海里突然浮上的这个念头。欺骗近藤他们的滋味确实不好受。但是,我别无选择。我没有别的办法。再说,即使告诉他们我不是真正的冲田,对近藤他们来说又有什么意义?真的也好假的也罢,现在除了我之外没有第二个冲田总司。但是,事实真的是这样吗?
13 大切なもの
そのまま寝床に戻った俺は一つの夢を見た。過去の記憶の夢だ。そうは言っても俺の過去じゃない、本物の沖田総司が経験したであろう過去の記憶。まだ京に出てくる何年も前、多摩の道場で、仲間達と稽古に励み、夢を語り合い、楽しく過ごしていた頃の夢だった。そこでは、皆が笑っていた。近藤さんも、めったに笑顔を見せない土方さんも、死んだ山南さんも、ほかの仲間達も、皆が笑みを浮かべていた。それは、近藤さんや土方さんへの信頼と、山南さんやほかの仲間達への情に満ちた夢だった。
飛び起きて、俺は自分の頬が濡れていることに気づいた。夢を見ながら、俺は泣いていたのだ。俺にとっては、なんの思い出もない夢のはずなのに。その瞬間、俺は悟った、俺の中でまだ本物の沖田総司が生きているのだと。そして、壊れ行く友情を憂いでいるのだと。
「答えは出たな」
そう呟くと、俺は寝床を抜き出し、早朝の京の街を近くの神社へと向かった。ある決意を持って。
やがて神社につく頃には、すっかり日が昇り、辺りを照らし始めていた。そのまま石段を上りきって、人気の無い境内に出ると、そこには、あの老人が立っていた。
「そろそろ来る頃だと思っておったよ。本当に構わないのか」
そう尋ねる老人に黙って頷く。既に覚悟は決まっていた。現代へと戻るのだ。例えそれで命を落とすことになろうとも、なすべき事をすべきなのだ。山南さんがそうやって、大切なものを守ったように。新撰組の人々に出会い、俺は人を信じることの喜びを知ることが出来た。それは、自分が体を借りている沖田総司のおかけでもある。そんな彼らのために出来ることがあるとしたら、それは一つしかない。この体を、元の持ち主に、本物の沖田総司に返すのだ。そして、その為には、邪魔な俺が消える必要がある。
「よかろう。では、目を閉じるがいい」
老人がそう告げると同時に、たちまち周囲に光が満ちて行く。
「一つ訂正するよ、あんたは死神なんかじゃなかった。短い間だが、あんたは俺に夢を見せてくれた、とてもいい夢を」
そう言って、再び老人へ視線を向けた時だった。俺は思わず言葉を失った。
「そんな!」
驚いたことに、老人の姿は、一人の若い侍にすり替わっていたのだ。そう、それはこの数ヶ月、誰よりも俺の近くにいた男、俺が身代わりを務め続けた相手、沖田総司だった。
「ありがとう」
ふっと彼の口が、そう動いたように思えた。俺の願望が、幻となった現れたのだろうか。だが、幻だろうと構わなかった。その瞬間、俺は自分の心が満たされていくのを感じたのだ。今まで味わったことの無い、なにか、とても暖かいもので。
「よかったんだよな、これで」
沖田に見送られるように俺は薄れ行く意識の中で、ゆっくりと目を閉じた。暖かい春の日差しに包まれたかのように感じながら。
就这样我又回到床上,然后做了一个梦。那是过去的记忆的梦。话虽这么说,但不是我的过去,而是真正的冲田总司所经历的过去。在来京都多年以前,还在多摩的道场时候,跟朋友们一起练剑,聊将来梦想的愉快时光。在梦里,大家都在笑。近藤,很少笑的土方,已经死了的山南,还有其他的同伴,大家都在笑。那是一个满载着对近藤和土方的信赖,还有对山南和其他朋友的感情的梦。
我突然起身,然后发现自己的脸庞湿润了。做梦的时候,我哭了。这个梦对我来说,明明没有任何印象。这一瞬间,我明白了。在我的体内,真正的冲田总司还活着。而且,在为即将崩溃的友情担忧。
“答案已经揭晓了。”
我小声自言自语,从床上爬起来,穿过清晨的京都街道,向附近的神社走去。我已经决定了。
到达神社的时候,太阳已经完全升起,周围的一切都被照亮了。我走上石阶,来到无人的内院,然后,就看到那个老人站在那里。
“我猜你也差不多该来了。你真的愿意这样吗?”
我默默地向老人点了点头。我已经做好准备了。我要回到现代去。就算这意味着死,我也要做我应该做的事。山南就是这样,保护了他所珍视的东西。通过与新撰组的人相识,我了解了信任别人的喜悦。这也多亏了冲田总司把躯体借给我。而我能为他们做的事,只有一件。就是把这副躯体还给他本来的主人冲田总司。而要做到这一点,我这个障碍必须消失。
“好吧。那么,请闭上眼。”
老人说这句话的同时,周围立即充满光芒。
“有句话我要更正,你不是死神。虽然时间很短,但是你让我做了一个梦,一个非常美好的梦。”
说着,我再次看向老人。然后,又说不出话来了。
“怎么可能!”
让我吃惊的是,老人不知何时变成了一个年轻武士的样子。没错,那就是数月以来,离我最近的人,我一直在扮演的人,冲田总司。
“谢谢。”
忽然,我仿佛看到他的说出了这几个字。是我的愿望以幻影的方式实现了吗?但是,即使是幻影也好。在这一瞬间,我感觉到自己的心被填满了。被我迄今为止从过体验过的某种温暖的东西填满了。
“这样就够了吧。”
冲田好像在为我送行,意识在渐渐消失,我慢慢地闭上眼睛。好温暖,我感觉自己好像被春日的阳光包围了。
1.オープニング
過去から未来へ、連綿と続く時の流れにおいて、偉人と呼ばれる歴史に残る出来事を成し遂げる人物が現れます。彼らの決断の裏側には何があったのか。これは偶然のいたずらから、時の狭間に迷い込んだ者たちの物語。そして、運命に翻弄された者たちの物語。その扉を開く時の散歩者があなたを知られざる歴史の裏側にご案内することになりましょう。
序幕
从过去到未来,在连绵不断的时间长河中,不断出现完成永载史册的丰功大业的伟人。在他们的决断的背后隐藏着什么呢。这是关于因为偶然的恶作剧而迷失在时空夹缝中的人们的故事。同时,也是被命运玩弄的人们的故事。打开这扇时空之门,让时空的散步者来引领你走向不为人知的历史另一面吧。
2 切腹
慶応元年2月、京都、新撰組の二部屯所内には重苦しい空気が漂っていた。隊を脱走した罪により、副局長だった山南敬助の切腹が行われるのだ。そして、俺の役目は、その介錯人だった。白装束で正座する山南さんの背後に立つと、俺は刀を振り上げ、彼の首筋を見詰めた。
「沖田君、君が介錯人で安心したよ。これで苦しまずに旅立てそうだ」
そう告げた山南さんの声はとても穏やかで、少しも死を恐れる様子は無かった。きっと、大津の宿場で俺に投降した時から、こうなる事を覚悟していたのだ。あの日、山南さんは新撰組を守るために脱走を決意したと語った。彼にとって新撰組は、命を落としてても守るべき存在だった。俺も信じていた。
新撰組はずっと孤独だった俺が、やっと見付けた居場所なのだと。しかし、その気持ちが今は揺らいでいた。俺を弟のように可愛がってくれた山南さん、その命を、自分の手で奪わなくてはならないのだから。
「どうしてこんな事に」
山南さんの背中を見詰めながら、俺の心に、過去の記憶が甦ってくる。仲間を求め、ひたすら己の居場所を追い求めてきた過去。それは、この時代で新撰組隊士、沖田総司として生きる前。俺がまだ、150年先の「現代」と呼ばれる時代で生きている頃の記憶だった。
庆应元年2月,京都,新撰组二部屯所内弥漫着凝重的气氛。原副局长山南敬助因脱队的罪名,即将被处以切腹之刑。而我的任务,就是做他的介错人。站在一身白衣,正襟危坐的山南背后,我举起刀,注视着他的脖子。
“冲田君,有你当我的介错人我就安心了。这样我走的时候也就不会痛苦了。”
山南说出这些话时语气非常平静,没有一丝对死亡的恐惧。当他在大津的驿站向我投降的时候,一定就已经预料到如今的结局了。那天,山南说他是为了保护新撰组而决心出逃的。对他来说,新撰组是值得他拼上性命保护的。而我也相信了。
新撰组给了一直孤苦伶仃的我,一个归宿。但是现在,这种想法却开始动摇了。因为,我现在就要亲手夺去那个待我如亲弟弟一般的山南的性命。
“为什么会变成这样?”
凝视着山南的背影,过去的记忆在我的心中苏醒。那是我一心追寻着同伴,一心追寻着归宿的过去。那是在我还没有成为现在这个时代的新撰组队员,冲田总司之前。我在150年之后,那个被称为“现代”的时代生活时的记忆。
3 孤独
ずっと孤独な人生だった。20年以上の人生を俺は家族も、恋人も、友人も無く、誰も心を許せる相手を持つ事無く生きて来た。別に一人でいる事が好きだったわけじゃない。ただ、どうしても人を信じる事が出来なかっただけだ。そもそも俺の人生は、最初から裏切られたばかりだった。生まれてすぐに親に捨てられ、施設に預けられたのを皮切りに、里親の家を盥回しにされ、友人と呼べる相手が出来ても、いつも関係は長続きしなかった。そんな人への不信感が決定的になったのは、長年の親友と思っていた相手に騙され、借金の連帯保証人として、多額の負債を背負わされてからだ。
人は平気で嘘をつき、相手が誰であろうと簡単に裏切る。それが短い人生の俺が学んだ結論だった。矛盾するようだが、そうやって心に刻まれた他者への警戒心によって、俺の孤独感は更に増していた。人を信じられなくなればなるほど本当に信じられる仲間が欲しくなるものだ。誰でもいい、仕事での愚痴を溢したり、日常の些細な幸せを語り合える、ただ、そんな相手が。
しかし、心に染み付いた不信感から、俺はどうしても人に心を開くことが出来なかった。そして、それ故に、俺が求めるような仲間を得ることが出来なかった。誰かを信じられるようになりたい。そう願いながらも、何度も挫折を繰り返し、いつしか俺は、諦め掛けていた、素直な人間に生まれ変わろうとする事に。だが、そんな俺が、あの日を境に、文字通り生まれ変わったのだ。しかも、幕末の京で活躍した、あの新撰組隊士、沖田総司として。
始まりは高速での玉突き事故だった。その事故の瞬間に起きたことは、スローモーションの様に脳裏に焼きついている。前の車が突然スピンして、後ろを走っていた俺の車にぶつかってきたのだ。ついてない。運転席で激しい衝撃を感じながら、思わず心の中で呟いていた。次に気づくと、大破した車体に挟まれた俺の周りで、他の車から降りてきた野次馬たちが何か叫んでいた。その声がどれも遥か遠くから聞こてくるように感じられる。痛みは無かった。いや、痛みだけじゃない、全身の感覚が麻痺していたのだ。どうやら俺は死ぬならしい。そんな思いが俺の脳裏を過ぎった。ろくでもない人生だ。構いやしないさ。思わず自虐の笑いが漏れる。俺が死んだところで、どうせ悲しむ人間など誰もいやしないのだ。だったら、一層このまま楽になった方がましかもしれない。そう諦めた時だった。野次馬の背後から、こちらを見詰める人物が目に留まった。黒のコートに黒の帽子、それは、全身黒ずくめの老人だった。
「死神」そんな言葉が脳裏に浮かんだ。
薄れ行く意識の中、一瞬だけその老人と目が会う。その瞬間だった、鋭い眼光に吸い込まれるように、俺の意識はそのまま暗い闇の中へと落ちていた。
我的人生一直是孤独的。20多年以来,我既没有过家人、恋人或是朋友,也没有任何人可以同他推心置腹。我并非喜欢独来独往。只不过,无论如何我也无法相信他人。原本,从出生那一刻开始,我的人生就充满了背叛。出生不久就被父母抛弃,自从进了孤儿院开始,就辗转于不同的家庭中,就算交到朋友,关系也从来不会持续太久。最终导致我无法信任任何人的决定性的一件事,是被一个相交甚久的朋友骗去当借贷担保人,导致背负了大量的债务。
人们总是可以面不改色的骗人,他们可以毫无顾忌地背叛任何人。这就是我短暂的人生经历所得出的结论。或许有一点矛盾,但是我的内心中对他人有着强烈的戒备心,因此我便感到愈发孤独。越是难以相信别人,就越是期望能找到能诚心相待的朋友。不管是谁都好,只要能相互吐吐工作上的苦水,聊聊平时生活里开心的点点滴滴,只是这样就足够了。
但是,对他人的不信任已经深深渗入我的内心,无论如何我也无法对他人敞开胸怀。也正是因为这样,我始终也没有找到期望中的朋友。真希望自己能相信别人。抱着这样的期待,我又经历了数次挫折,终于我开始放弃了,放弃了重新成为一个直爽的人。可是,就在那天,我真的重生了。而且成为了那个在幕府末年活跃于京都的新撰组成员冲田总司。
事情起源于一起高速公路上的追尾撞车事故。事故瞬间发生的事,就像慢镜头一样深深地印在我的脑海里。我前面的车突然打了个急转弯,朝我的车冲了过来。真是倒霉。在驾驶座上感觉到激烈撞击的同时,我心里不禁这样念到。回过神来的时候,我已经被夹在破烂的车子里,周围有一群从别的车上下来的看客在吵吵嚷嚷。他们声音仿佛来自某个遥远的空间。我一点也没有感觉到疼痛。不,不仅是疼敢,我的全身都已经麻痹了。看样子我已经死了吧。一瞬间这种想法掠过我的脑海。反正活着也没什么意思。算了。我不禁开始自嘲。反正我就算死了,也不会有人伤心难过。那还不如干脆死了痛快。就在我准备放弃的时候,我的视线停留在了人群背后。有个人在注视着我。一个穿着黑色风衣,戴着黑色帽子,一身漆黑的老人。
“死神”我的脑海里立即就浮现了这个词。
意识渐渐模糊的时候,一瞬间我的视线与老人相交。就在这一瞬间,我仿佛被他锐利的眼神吸过去一般,我的意识就这样猛然朝着黑暗坠落下去。
4 新撰組
次に目を開けると、俺は畳敷きの部屋で、布団の上に寝かされていた。そこは天井に梁のある古い日本家屋で、どう見ても病院とは思えなかった。少なくとも死後の世界って訳じゃないような。どうやら助かったらしい。少しばかりほっとした時だった。
「総司、やっと気づいたか?」
声の方へ視線を向けると、布団の脇に二人の男が座っていた。厳しい顔つきの大男に、鋭い目つきの優男だ。しかしどういう訳か、二人とも、髷に袴姿という、まるで時代劇に出てくる侍のように格好をしている。
「心配したぞ。稽古中にぶっ倒れやがって」
「泣くなよ、近藤さん。その様を誰かに見られたら、隊の士気にかかわる。ほら、総司も呆れてるぜ」
薄っすらと涙を浮かべる大男に、隣の優男が諭すように言う。
稽古?隊の士気?一体何の事だ?どうやら大男が俺の無事を喜んでいるらしい事は分かった。しかし、まるで話が見えない事に苛立ち、思わず口を開く。
「ちょっと待ってください。先から総司って誰の事です?そもそもここは…」
だが、そこまで言いかけて俺は、ある事に気づき凍りついた。
「…あ」
頭が可笑しくなったのかと思った。あれほどの大事故に遭ったにも拘わらず、俺の体は掠り傷ひとつ負ってなかった。それはいい。問題はその鍛え抜かれた体がまるで見覚えの無い物だった事だ。
「からかってんのか?総司」
動揺する俺に構わず、優男は呆れたような視線をこちらに向けた。
「新撰組隊士沖田総司、それがてめえだろうが。でなけりゃ、一体誰だってんだ?」
当然というような表情で告げられ、更に動揺する。新撰組といえば、150年以上前、幕末の京都で、幕府打倒を目指す浪士たちの取り締まりに当たった剣客集団だ。沖田総司は、その新撰組の一番隊隊長として活躍した天才剣士だったはず。男は、俺がその沖田総司だと言うのだ。現実的にありえない。過去にタイムスリップするはずも、まして、沖田総司になるなんて事が起こるはずがない。
一体何の冗談なんだ?そう問い詰めようとして、俺は更に驚いた。俺の脳裏に、なぜか目の前の二人の名が浮かんだのだ。近藤勇に土方歳三。そして、彼らが新撰組の局長と副長だという事も。
「まだ疲れが残っているようだな。総司、今日はゆっくり休め」
それだけ言うと、俺を沖田と信じる二人は、呆然とする俺を残して、部屋を出ていた。
ふさけるな!これはやっぱり夢に違いない。きっとあの交通事故の後に、病院へと運ばれ、そのベッドの上で、悪い夢を見ているのだ。あまりにも受け入れ難い状況に、俺は寝床を抜け出すと、部屋の外へ出ようとした。
だが、障子戸を開けて、縁側に出たところで、その足が止まった。縁側に面した中庭で、十名ほどの若者達が、木刀を振って稽古をしていたのだ。その誰もが侍の格好をしている。そして、赤地に誠の文字が浮かぶ旗。
そんな。全てが始めて見たはずの光景だった。それにも拘わらず、全てに見覚えがあった。ここは、新撰組の壬生の屯所だと、あるはずのない記憶が告げていた。瞬間、俺は悟った。どういう原理か分からない、だが、俺は時代を飛び越え、新撰組の剣士、沖田総司になってしまたのだと。
睁开眼的时候,我已经躺在了一个榻榻米房子里的被褥中。那是一间天花板上有梁的古老日式房屋,怎么看也不像是医院。至少这里不是死后的世界吧。看样子是得救了。我稍稍松了口气。
“总司,你终于醒了?”
我朝着声音的方向望去。被褥的旁边坐着两个人。一个是神色严厉的高个子男人另一个是眼神犀利面容亲切的男人。可是不知为什么,两人都扎着发髻,穿着和服,简真就跟大河剧里出现的武士一模一样。
“担心死我了。你练剑的时候突然晕倒了。”
“别哭了,近藤。你这样子要是让人看见了,会影响队伍的土气。你看,总司都受不了了。”
大个子男人的眼里有些许泪水,旁边面容亲切的男人劝道。
“练剑?队伍的士气?他们到底在说什么?”看得出大个子男为我的平安无事感到高兴。但是,我完全搞不清楚他们到底说什么,不禁有些着急。
“等等。你们刚才说的总司到底是谁?还有这里究竟是…”
话说到这里,我突然意识到一件事,一下子僵住了。
“…啊!”
我真的以为自己的脑袋出问题了。明明发生了那么严重的事故,我身上却一点伤痕也没有。不仅如此,我的身体看起来经过锻炼,而对我而言却是完全陌生的。
“你在耍我们吧?总司。”
面容亲切的男人不顾我的疑惑,一脸不屑地转过头对我说。
“新撰组队员冲田总司,不就是你么。不然,你以为是谁?”
被他这么一副理所当然的样子一说,我更加疑惑了。新撰组,就是那个150多年前,活跃于幕府末期的京都,负责管制以打倒幕府为目的的浪士的剑客集团。冲田总司应该是当时新撰组一番队队长,天才剑士。这个男人却说,我就是冲田总司。这根本不可能。首先穿越时空回到过去就不可能,更不用说变成冲田总司了。
到底开什么玩笑?我正准备这么问,我又被自己惊呆了。我的脑海里,不知为何浮现出了他们两人的名字——近藤勇和土方岁三。而且,他们分别是新撰组的局长和副长这件事我也知道了。
“看来你还有点累,总司。你今天先好好休息。”
他们已经认定了我是冲田,说完这些,就走出了屋子,剩下我一个人呆呆地留在房间里。
开什么玩笑!这一定是一场梦。那场交通事故之后,我肯定被送进了医院,这一定是我在医院的病床上做的一场噩梦。我实在无法接受这种情况,于是起身,朝屋外走去。
但是,打开拉门,走到外廊的时候,我又被眼前的景象惊呆了。面朝外廊的院子里,大概有十来个年轻人正挥舞着木刀在练功,而且他们都是武士打扮。还有那面红底的“诚”字旗。
怎么可能!这些景象我都是第一次见到。尽管如此,这一切我却似乎都有印象。这里就是新撰组的壬生屯所。原本不应存在的记忆告诉我。我恍然大悟。虽然不知基于什么原理,但是,我真的已经穿越时空,成为了新撰组的剑士,冲田总司。
5 時の散歩者
その夜、混乱する頭を静めようと、俺は静まり返った屯所の中庭で、月を見上げていた。夕食を持ってきた隊士の話しを総合すると、今は当時の年号で言うところの、元治元年で、単なる浪人達の集まりでしかなかった新撰組が、京都の治安役を務めていた会津藩から認められ、ようやく正式に活動し始めたころらしい。しかし、そんな話を聞かされても、俺はまだ半信半疑だった。この状況に論理的な説明を求めるとしたら、全てが俺の頭の中で起こっている妄想という答えぐらいだ。だが、それにしては余りにも全てがはっきりし過ぎていた。そもそも、妄想を思い描く人間が、その妄想の中で己の正気を疑ったりするだろうか。
「もっと考えるんだ。きっと何か説明がつくはず」そう呟いた瞬間だった。背後に人に気配を感じ、振り返ると、なんと、茂みの影にあの老人が立っていたのだ。
「あんたは?」間違いない。それは事故現場で見た黒衣の老人だった。まさか。
「これは全てあんたが仕組んだ事なのか?あんた一体!」
困惑する俺を見て、彼は説明をし始めた。
「今回は運悪く、不幸な偶然が重なったようだ」彼は時の散歩者。時を旅する者だという。
「過去と未来、私はあらゆる時代、あらゆる場所を旅してきた。しかし、時折移動の際に起こる時空の波に、精神を同調させてしまう者が現れる。今回のお前さんの様に」
あの事故が引き金となって、偶々時空に歪が生じ、俺の精神は時間の波に巻き込まれてしまったのだと。そして、行き場を失ったまま、偶然にも、150年前の沖田総司の者と一体化してしまったのだという。
老人の話は普通だったら信じられる様なものではなかった。だが、ほかに説明しようが無いのも事実だった。何より、俺は現にこうして、沖田総司となっているのだ。
「さあ、私と一緒に元の時代に戻るのだ。時の流れに、余計な負荷をかける訳にはいかん」
この理解不能の状況から抜け出せる。老人の言葉に俺はほっとした。だが、老人が差し出した手を握ろうとして、一つの疑念が浮かんだ。まさかとは思うが、ありえない話ではない。
「一つだけ教えてくれないか?あの事故の後、元の時代の俺はどうなったんだ?」
すると、俺の問い掛けに答える代わりに、老人は黙って首を横に振った。やはりそうなのだ。あんな大事故で無事で済む訳が無い。
「死ぬことが分かって戻るとはね。やっぱりあんた死神だったな。そう言う事なら、俺は戻るつもりは無いよ。あの世に行くぐらいだったら、他人の体で生きた方がまだましだ」
老人から離れると、俺は強い口調で言い放った。それに対して老人は静かに答えた。
「沖田総司もいずれ死ぬ」
歴史通りなら、沖田総司が、若くして結核で亡くなることは知っていた。それでも今すぐに死ぬよりは、僅かな間でも、生きる方が増しに決まっている。
「そんなことは百も承知だ。」
だが、老人はそんな俺の拒絶の言葉にも、顔色一つ変えなかった。
「全てを決めるのはお前さん自身だ。ただし…」
まるで俺の答えを予期していたかのように告げると、老人は、最後に一言だけ付け加えた。もしも気が変わることがあったら、いつでも近くの神社に来るがいいと。
その次の瞬間、突如周囲の物音が聞こえなくなったかと思うと、老人の姿はまるで煙にでも変わったかのように、俺の前から消えていた。
「気が変わったら…そんな事ある訳が無い」
再び、虫の音が響き渡るまで、俺は暫く、その場に立ち尽くしていた。そして、その翌日から、沖田総司としての俺の人生が始まった。
当晚,为了让混乱的头脑冷静下来,我在屯所寂静的庭院里赏月。把送晚饭的队员的话综合起来就是:现在按当时的年号应该是元治元年,当时还只是浪人集团的新撰组,好不容易才获得了负责京都治安的会津藩的认可,刚刚开始正式活动。但是,就算听了这些话,我还是半信半疑。如果一定要给现在的状况一个合理的解释,那就有这一切不过是我心中的幻想。可如果真是幻想,这一切却又有些过于真实了。再说,幻想中的人,会怀疑自己的精神是否正常吗?
“再仔细想想。一定能找到什么解释的。”就在我这么低语的瞬间,感觉到背后有人,一回头,就看到那个老人站在树影间。
“你是?”没错。就是那个出现在车祸现场的黑衣老人。难道!
“这些事都是你一手造成的吗?你到底!”
他看着困惑的我,开始慢慢讲述事情的缘由。
“这次似乎有些不走运,不幸的偶然重叠了。”他说他是时间的散步者,旅行于时空中。
“从过去到未来,我一直穿行于各种时代,各种空间。但是,移动时时空会产生波动,有时会因此出现精神与时空波动同调的人。就好像你这次一样。”
他说因为那场事故,时空偶然产生歪曲,而我的精神被卷入了时间波中。然后,就这样失去方向,偶然与150年前冲田总司的精神一体化了。
通常情况下一定不会有人相信老人的话,但是,现在的情况也没有其他的原因可以说明。更何况,我现在的的确确成为了冲田总司。
“来吧,跟我一起回你原来的时代。不能给时间之流增加多余的负荷。”
可以离开这种不可理解的状态了。听完老人的话,我放心了。但是,在我准备握住老人手的时候,我心里浮上来一个疑问。虽然觉得不太可能,但也不是完全没有可能。
“能回答我一个问题吗?那场事故之后,原来那个时代的我到底怎么样了?”
结果,老人没有回答,只是默默地摇了摇头。
果然是这样。遇到那么大的车祸,怎么可能没事。
“明知道回去就意味着死怎么可能回去呢。我看你果然就是死神。既然这样,那我就不回去了。与其去死,还不如借着他人的躯体活下去。”
我退了几步,语气坚决地说道。而老人却平静地说。
“冲田总司总有一天也会死的。”
如果真如历史所说,冲田总司应该会因肺结核英年早逝。就算之样,哪怕活不了多长时间,也比现在立即死掉要强。
“这我一清二楚。”
但是,老人听到我这些坚决的回绝,脸色依然没有丝毫改变。
“一切都由你自己来决定。只不过…”
听起来老人似乎早已料到我会这么回答。说过这句话之后,老人最后又加了一句。
“如果哪天你改变主意了,随时可以到附近的神社来找我。”
下一个瞬间,周围的声音突然消失,老人像变成烟雾一样,从我眼前消失了。
“如果改变主意…怎么可能。”
我呆呆地伫立在原地,过了不久,虫鸣声再次在我耳边响起。然后,第二天,我作为冲田总司的人生开始了。
6 沖田として
幕府の力だけでは抑えきれなくなった、過激な攘夷運動を行う不逞浪士達を取り締まる。それが、京の都での新撰組の役割だった。その為、昼は不逞浪士が狼藉を働いていないか、市中を見回り、役目が無い時は、屯所で新米隊士達に稽古をつける。それが新撰組隊士となった、俺の日課だった。別に本物の沖田総司に成り代わろうと思ったわけじゃない。ただ、この時代の人間ではない俺に、外に行く当てがある訳も無く、新撰組の沖田総司として生きるしかなかっただけだ。
最初のころは、何時正体がばれるかとひやひやしていたが、すぐにそれが杞憂だと思うようになった。実際、沖田が子供の頃から付き合いがある、近藤さんと土方さんも、俺の演じる沖田総司に対して、違和感を覚えていないようだった。当然と言えば当然かもしれない。変わったのは中身だけで、沖田総司としての外見はまるで変わっていないのだ。更に俺の体には、それまでの沖田総司の記憶や知識がある程度残されていたため、生活習慣の違いなどでもぼろを出すことも無かった。ただ、やはり自分とは、余りにもかけ離れた人物を演じるのには限界があった。もともと、人付き合いが苦手な俺は、何かに付けて声をかけてくる隊士達への対応に四苦八苦する羽目になってしまったのだ。
天才剣士という後世のイメージとは異なり、史実の沖田はいつも冗談ばかり言っている、ムードメーカーのような存在だったらしい。その為、隊士達は一様に沖田を慕っていたのだ。だが、そんな俺の力になってくれる人物がいた。それは山南さんだった。
山南敬助、新撰組の副局長であり、北辰一刀流の免許皆伝の腕前ながら、教養もあり、穏やかで、人当たりのいい性格の人物だった。ある日、その山南さんが、俺に声をかけてきたのだ。
「沖田君、余り元気が無い様だけど、何か悩み事でもあるのかい?」
いつもの様に、近所の子供達のおにごっごに付き合わされていた俺は、その声に慌てて振り返った。するとそこに、からかう様な笑みを浮かべた山南さんが立っていたのだ。
「そんな事ありませんよ。少し疲れが溜まってるだけです」
慌てて首を横に振って否定する。まさか何か感づかれたのだろうか。
「そうかい。いや、このところ、君が近藤さんたちといるところを余り見ないからね」
言葉自体は柔らかかったが、山南さんは、正体がばれないように、近藤さんや土方さんを避けている俺を鋭く見抜いていた。もっとも、局長の近藤さんや副長の土方さんと、江戸にいた頃からの知り合いで、本物の沖田とも古い付き合いがある人物なのだから。俺の微妙な変化に気づくのも当然と言えば当然だったのかもしれない。
「なにを悩んでいるにしろう、無理はしないことだ。人は思うままにしか行動できない。なすべきと思う事をすればいいさ。何より君は新撰組にとって無くてはならない人物だからね」
それだけ言うと、山南さんは「邪魔したね」とその場を去っていた。
もしかすると、単純に悩みを抱えているように見えた俺を励ますための台詞だったのかも知れない。だが、山南さんの言葉はなぜか俺の心に響いた。この男だったら、俺が味わってきた孤独も理解してくれるかも知れない。そう思わせる何かがあったのだ。それがきっかけとなり、俺は自然と山南さんと行動を共にするようになっていた。ただ、俺が山南さんと親しくする事を警戒する人物がいた。副長である土方さんだ。
监管那些幕府无暇顾及的,进行着过激攘夷运动的无法无天的浪士。这就是新撰组在京都的任务。为此,白天要在市内巡逻,以防止无法无天的浪士进行暴力活动。没有任务的时候,就在屯所内指导新人训练。这就是我成为新撰组队员之后的日课。其实我从来没有想过要代替冲田总司,只是我不属于这个时代,也没有别的去处,只好作为新撰组的冲田总司活下去。
刚开始的时候,我成天提心掉胆,担心自己的身份被揭穿。不过很快就明白我只是杞人忧天在。因为,就连与冲田从小一起长大的近藤和土方也从来没有对我所扮演的冲田总司产生过怀疑。这也许是理所当然的。灵魂虽然改变了,但是从外表看来冲田总司没有丝毫变化。更何况我的体内,还残存着一些冲田总司的记忆和知识,这样便不会在生活习惯等方面令人产生怀疑。不过,一直扮演一个与自己完全不一样的人物,始终会有所局限。原本我就不擅长交际,而队员们有点什么事都会来找我。单是应对他们,就已经弄得自己疲惫不堪。
与后世所流传的天才剑士形像不同,史实中的冲田似乎是一个喜欢开玩笑,经常扮演活跃气氛角色的人。因此,队员们都非常亲近冲田。不过当时,幸好有一个人鼓励了我,这个人就是山南。
山南敬助,新撰组副局长,得到北辰一刀流真传的高手,是个很有教养,性情温和,待人亲切的人。
有一天,山南突然问我:“冲田,最近见你没什么精神,是不是有什么烦恼?”
我当时正像平时一样,跟附近的小孩子们一起玩捉鬼游戏,听到声音,慌慌张张回过头,就看山田到一脸玩笑似的表情站在那里。
“没这回事,只不过是有点累而已。”我急忙摇头否认。他该不会是察觉到什么了吧。
“是吗?哎呀,最近很少见你跟近藤他们在一起呢。”
他的这些话语本身非常柔和,我却听得出来,山南看出我在刻意回避近藤和土方。我不想让自己的身份被识破,而局长近藤和副长土方跟真正的冲田在江户时就认识,他们俩是冲田的老朋友了,察觉到我的微妙变化也并非完全没有可能。
“不管有什么烦恼,都不要太勉强自己。人们只能做出自己想到的事。只要做自己该做的就够了。不管怎么说,对新撰组来说你是不可或缺的人物。”
说完这些,山南说了声“打扰你了”就走了。
可能,他看出我有烦恼,只是单纯地为了鼓励我才说的这番话。但是,不知为何,他的话却在我的心里产生了共鸣。这个男人,说不定能理解我内心一直以来的孤独。他的话语里有些什么让我产生了这样的想法。自此之后,我很自然地开始与山南一同行动。不过,有一个人在担心我与山南过于亲近。这个人就是副长土方。
7 不和
そもそも、副長という地位にある土方さんは、新撰組という組織を鉄の掟によって、実質的に纏め上げている人物であり、穏やかで、優しい山南さんとは対照的に、どちらかと言えば、口数も少なく、何よりも規律を重んじるタイプだった。その為二人は何かに付けて衝突することが多かった。もっとも、俺の前でお互いの事を悪く言うことは少なかったが。
「総司、手前、最近妙に山南さんとばかりつるんでるそうだな。別に誰かとつるもうが構わないが、近藤さんを蔑ろにする様なまねだけはするなよ」
付き合いを避けようとしている俺の行動に気づいたのか、ある時、廊下で擦れ違いざまに、そう土方さんがくぎをさしてきた。
俺が局長である近藤さんの意向よりも、副局長の山南さんの考えを重視しているように見なされたのだ。しかし、そう思われても仕方が無かったのかもしれない。俺が近藤さんと土方さんを避けるようになったのは、正体がばれる事を恐れただけではない。新撰組という組織を維持するために、規律を立てに、冷徹であり続ける土方さんのやり方は現代人の俺にとって、受け入れ難いところがあったからだった。そして、そんな土方さんを黙認する局長の近藤さんにも俺は不満を持っていた。
「歳のやつは隊をまとめるために、必死になってくれている。たとえそれが、悪役と見なされることになってでもだ」
何かあるたびにそう語る近藤さんは、俺からすれば、局長という地位にありながら、自ら動こうとせず、ただ綺麗事を言っているだけにしか思えなかった。
そもそも近藤さん達が多摩の田舎から、京へ出てきた目的は単純なものだった。徳川家に仕える直参の家臣となり、一旗揚げる。それが目的だった。本当に国を憂いだ訳でも、世直しを考えているわけでもない近藤さん達の行動は、常に論理的に話を進めようとする山南さんのやり方と比べても、余りにも世俗的で、単純に感じられるものだった。だが、暫くして、そんな彼らへの見方が大きく変わる出来事が起こった。
原本身居副长一职的土方就是一个严格执行铁则,掌握着新撰组的实权的人,他话很少,最为看重纪律,与为人温和亲切的山南正好形成对照。因此两人经常会为一些事情发生冲突。不过,他们很少在我面前数落对方的不是。
“总司,你最近好像老是跟山南混在一起啊。你跟谁混在一起我管不着,不过你可千万别把近藤不当一回事。”
也许是察觉到我刻意回避他们的行为,一天,在走廊下擦肩而过的时候土方叮嘱我。
是因为在他看来,比起局长近藤的意见,我更重视副局长山南的意见吧。但是,他会这么想也在情理之中。我之所以刻意回避近藤和土方,不仅仅是因为担心身份被识穿。还有,为了维持新撰组这个组织的运行,土方那种以纪律为准绳的冷酷做法对于我这个现代人来说,实在难以接受。进而对于默认土方这种做法的局长近藤也产生了不满。
“岁三那家伙为了维护这个队伍,非常拼命。就算一直当恶人他也不在乎。”
一旦出什么事近藤就会这么说。但是在我看来,他身居局长之职,却从不想要做些什么,只会说些漂亮话。
原本近藤他们从多摩的乡间来到京都的目的就很单纯。成为直接隶属于德川家的家臣,闯出一番事业。”这就是他们的目的。在我看来,他们这种既不是因为忧国,也不是因为希望改变世间所做出的行动,相对于山南那种以理服人的处事方式,实在是过于庸俗简单了。但是没过多久,发生了一件事,彻底改变了我对他们的看法。
8 池田屋事件
元治元年6月、新撰組での生活になり初めて、1ヶ月以上が経とうとしていた頃、一つの事件が起きた。
偶々捕らえた攘夷派の浪士が、驚くような陰謀を白状したのだ。長州をはじめに肥後、土佐といった攘夷派の脱藩浪士を中心とした集団が、京の町に火を放ち、その騒ぎに乗じて、幕府派の公家達を幽閉し、御所から、帝を連れ出そうとしていると言う。この企てを知った近藤さんは、すぐさま市中に潜伏する浪士達を捕らえるため、直ちに隊士達に出動を命じた。早速、近藤隊と土方隊の二つの隊に分かれて、京の街の繁華街をしらみづぶしに探索する。その結果、怪しい宿を発見したのは俺の加わった、近藤隊だった。
「歳の隊を待っていては気づかれる、総司、行くぞ!」
数名の隊士を表と裏の出入り口に配置し、逃げ出してくる敵に備えさせると、近藤さんは、俺のほかに、永倉さん、藤堂さんと言う腕利きだけを率いて、一気に宿の中へ突入した。
「ご用あるためである!」
そう叫ぶと、近藤さんは宿の亭主の制止を振り切って、一気に二階への階段を駆け上がる。すると、予想通りそこには、20人ばかりの浪士達が集めていた。一瞬驚きながらも、たちまち抜刀する浪士達。
「手向かい出せば容赦なくきる!」
近藤さんの声が合図になったかのように、たちまち切り合いが始まった。緊張が走る。確かに屯所での稽古では、もともとの沖田の才能ゆえか、誰にも負けなかった。だが、実戦となれば話は別だ。ところが不思議なことに、切りかかってくる相手を前に、体が勝手に動いた。踏み込みざまに最初の一人を切り捨て、そのまま返す刀で、二人目の胴を切る。当然、人を切ったのは初めてだった。だが、それ以上に俺は自分の動きに驚いていた。竹刀さえ握ったことの無かった俺が、まるで剣の達人のように動けるのだ。しかし、数名を切ったところで、突然激しく咳き込み、俺は床に片膝をついて蹲ってしまった。口を押さえた手のひらに、べったりと血がついていた。俺の脳裏に、結核の二文字が浮かんだ。そうか、だが、何もこんなときに…その隙を見逃すはずも無く、男達の一人が切りかかってくる。
辛うじて刀で受け止めたものの、壁際まで強引に押し込まれてしまった。意識が遠のきながらも、徐々に相手の刃が近づいてくるのが分かる。
「総司、無事か?」
刹那、近藤さんの声が響く。俺が防いでいた男を一刀の元に切り捨てると、近藤さんは俺を庇いながら、残りの浪士達を血祭りにあげていく。
そんな近藤さんの活躍を見ながらも、俺の意識は再び混濁の中へと落ちていった。
元治元年6月,我在新撰组生活一个多月之后,发生了一件事。
偶然被抓的一个攘夷派浪士,供出了一个惊天阴谋。以长州为首,肥后、土佐等脱藩浪士为中心的集团计划在京都放火制造混乱,乘机囚禁幕府派重臣,将天皇带出皇宫。听到这个阴谋,近藤立即命令所有队员出动,逮捕潜伏于市内的浪士。很快,我们分成近藤队和土方队两队,对京都繁华地段开始进行逐一排查。结果,我所在的近藤队首先发现了可疑客栈。
“在这里等岁三的队伍过来会被察觉,总司,我们上!”
安排好了数名队员守在前后门的出口以防敌人出逃之后,近藤就带领着我、永仓、藤堂等几个武艺比较高的人冲进了客栈。
“我们有公事要办!”
近藤一边叫一边摆脱店主的阻拦,一口气朝二楼冲了上去。果然,有20来个浪士集中于此。他们愣了一下,立即回过神来抻手拔刀。
“谁敢还手就地处死!”
近藤的声音仿佛是信号一般,两队人立即展开厮杀。我全身的神经紧张起来。确实,在屯所训练里,也许是由于冲田本身的才能吧,我从来没有输给任何人。但是,实战与训练完全不同。不可思议的是,面对冲提刀冲过来的敌人,我的身体不由自主的动了起来。一进门我立即斩杀了一人,然后回刀顺势斩向第二个人。当然,这是我有生以来头一次杀人。但是更加让我震惊的是我的动作之娴熟。我这个以前连竹刀都没碰过的人,挥起刀来简直就是一个剑术高手。但是,斩杀数人之后,我突然开始剧烈地咳嗽,不由得单膝跪地。捂住口的手掌上,留下了一滩浓血。我的脑海里立即浮现出两个字——结核。这样啊,但是,为什么偏偏这个时候…敌人怎么可能放过这个绝好的机会,马上就有一个男人提刀向我砍来。
好不容易才抵挡住对方的刀,我终于还是被直逼到墙角。意识渐渐开始模糊,但我仍然清晰地知道,对方的刀在一点点向我逼近。
“总司,你没事吧?”
突然,近藤的声音响了起来。他一刀斩杀了与我抗衡的男人,然后一边护着我一边将剩下的浪士们斩杀殆尽。
看着近藤挥舞着刀,我的意识再一次陷入混沌中。
9 同志
「近藤さん」
気づくと、近藤さんが俺の顔を覗き込んでいた。その背後では、重傷を負った浪士達のあげる呻き声が聞こえる。どうやら、俺が倒れている間に、切り合いは終わったらしい。
「馬鹿野郎!連中に切られたのかと思ったぞ。心配掛けやがって!」
そう怒鳴りつける近藤さんの目には、最初に会ったときと同様に、涙が浮かんでいた。
「泣いてるんですか?まさか怪我でもしたんじゃないでしょうね。」
妙な気恥ずかしさにおどけて見せたものの、俺には分かっていた。あの時と同じく、近藤さんは本気で俺のことを心配していたのだ。
「いいか、総司。俺達より先に死にやがったら、承知しないぞ!」
そんな近藤さんに、俺は返す言葉を持たなかった。確かに近藤さん達は大きな志願を持たず、己の欲のために動いていた。ただ、それでも彼らは、純粋に仲間との絆を信じていた、その相手の中身が変わったとも知らずに。それを愚かで単純だと切り捨てるのは容易だった。だが、涙を浮かべた近藤さんの顔を見てしまった俺は、それを笑うようなまねなど出来なかった。それは純朴で、本当に心からの涙だった。
もしかすると、俺は本当に掛け替えの無い仲間を手に入れたのかも知れない。偽りでもいい、俺は沖田総司として生きたい、たとえ結核で命を落とすまでの短い間だったとしても。この事件をきっかけに、俺の心に、そんな思いが生まれ始めていた。
池田屋事件。後世にそう伝えられた騒動によって、新撰組は京の都を大火の危機から救ったとして、一躍その名を世間に轟かせることになった。そして、事件を境に、俺は以前よりも近藤さん達と話をすることが多くなっていた。
俺のために本気で泣いてくれた近藤さん、俺が必要だと言いてくれた山南さん、更には一番隊の隊長として、俺を慕ってくれる隊士達。誰かに頼りにされ、必要とされる、その喜びを知り、俺は初めて仲間というものを意識するようになったのだ。何時しか俺は彼らと過ごすことに、不思議な安らぎを感じ始めていた。ずっと孤独だった俺が、沖田総司となったことで、ついに求めていたものを手にすることが出来たのだ。共に泣き、共に笑い合える仲間達だ。新撰組の仲間達と共に時代を駆け抜けたい。それが沖田に転生した俺にとっての、密かな目的となろうとしていた。幸い、あれから結核の症状は現れず、小康状態になっている。俺にはまだ時間がある、そう思っていた矢先、再び事件が起こった。山南さんが脱走したというのだ。
“近藤。”
醒来的时候,近藤正盯着我的脸。他的背后传来身受重伤的浪士们的呻吟。看来,在我晕倒的这段时间,战斗已经结束了。
“你个混蛋!我还以为你被人砍了。又让我担心!”
近藤怒吼着,在他的眼睛里,跟第一次见面的时候一样,含着泪水。
“你在哭啊?你该不会是受伤了吧。”
我有些尴尬地开着玩笑,不过心里清楚,跟当初一样,近藤是真心地担忧我的安危。
“你听着,总司,你要是敢比我们早死,我决不会放过你的!”
面对这样的近藤,我再也说不出话来。
近藤他们或许真的没有什么雄心壮志,他们所有的行动只是为了实现一己私欲。不过,尽管这样他们依然纯粹地相信朋友之间的羁绊,即使连这个朋友的灵魂已经改变都没察觉。割舍他们这种愚蠢而单纯的感情似乎很简单。然而,看到近藤脸上浮现出的泪水,我却怎么也笑不出来。那是纯朴至极的,发自内心的泪水。
说不定,我真的已经找到了无可替代的朋友。哪怕是假的也好,我希望可以作为冲田总司活下去。哪怕很快就会因为肺结核死去,哪怕这段时间很短暂。发生这件事之后,这种想法开始在我的心里扎根。
池田屋事件。通过被后世如此称呼一场骚乱,新撰组拯救了京都免受大火之灾,一夜之间名动天下。然后,以这件事为契机,我跟近藤他们之前的话也比以前多了起来。
真心为我哭泣的近藤,说我不可或缺的山南,还有把我当作一番队队长尊敬的队员们。现在我知道,原来被人信赖,被人需要是多么令人高兴的事。我第一次开始明白朋友的含意。不知从什么时候起,跟他们在一起的时候,我开始感觉到一种不可思议的安宁。一直孤独的我,在成为冲田总司之后,终于得到了我梦寐以求的东西,那就是可以一起哭一起笑的朋友。真想跟新撰组的朋友们一起迎接新时代。这渐渐成了转生为冲田之后的我心里一个隐密的目的。幸好,那件事之后肺结核的症状没有再出现,病情一直很平稳,我还有时间。但是就在这时候,又发生了一件事。山南出逃了。
10 山南脱走
話を聞いた時は信じられなかった。あの鉄の掟に山南さんが背くなんて。脱走は新撰組の大紀によって切腹の処分だ。理性的な山南さんが、副局長という地位にありながら、そんな暴挙に出るあんて理解できるはずが無い。もっとも、山南さんが今の新撰組に不満を持っているのは知っていた。新撰組が幕府から認められるようになっていこう。今後の方針をめぐって、山南さんは土方さんと衝突することが増えていたからだ。
「頼むから逃げ切ってくれ」
追跡の任務を与えられ、恐らく江戸に向かったであろう山南さんを馬で追いかけながら、俺は彼がこのまま見つからないことを祈り続けていた。だが、その思いは意外な形で裏切られることになった。
大津の宿場町まで来たときだ。ある宿の前で、俺は山南さんに呼び止められたんだ。
「沖田君、遅かったじゃないか」
馬を休ませられる場所を探していた俺は、宿の前で、ニコニコと笑みを浮かべて座っている山南さんを見て、ぎょっとした。
「おかけで少しばかり、体が冷えてしまったよ」
そう言って、おおげさに体を摩って見せる姿は、まるで、少しばかり散歩にでも出掛けていたかのようだった。
「どうしてです?!なぜこんなまねを?!」
しかし、そんな俺の問いに対して、山南さんは、軽く笑みを浮かべただけだった。
「『どうして』か。話したいことも色々あるだろうが、今日はもう遅い。ここで宿を取って、出発は明日の朝にしようじゃないか」
そう言うと、山南さんはそうすることが当然というように、さっさと宿の中に入ってしまった。やもなく俺も、その後から宿の入り口をくぐる。脱走しておきながら、まるで逃げるつもりなど無かったかのような山南さんの態度に戸惑いながら。
「どうして脱走なんか?教えてくれますよね」
その夜、薄暗い宿の一間で、山南さんと酒を酌み交わしながら、俺は湧き上がる疑問をぶつけずにはいられなかった。
「なぜなんです?どうして?」
同じ問いを繰り返す俺に、ふっと山南さんは自嘲の笑みを浮かべた。
「今の新撰組にとって、私の存在が邪魔だからだよ」
そう言って、暫く黙ったまま、宿の天井を見詰めていると、やがて、山南さんは溜息まじに、再び口を開いた。
「沖田君、私はね、君達のことをどこかでずっと見下していた。学もなく、多摩の田舎剣術者でしかない君達を。しかし、同時に羨ましかった。君達の素朴な情熱が、理屈や計算を抜きにして、単純になにかを信じることが出来る純粋さが、私が試衛館道場入りびたり、君達と共にいたのもその為だ」
話を続ける山南さんの視線はまるでどこか別な場所へと向けられているかのようだった。そう、今は失われてしまった、懐かしい故郷でも見るかのように。
「そして、その絆こそが新撰組のよさであり、強さなんだと私は思っている。だが、その絆に綻びが生まれようとしている。沖田君、例えば君だ。君は私に遠慮して、近藤さんや土方君と、距離を置いているのではないか。自分と土方さんの対立に、ほかの隊士達を巻き込みたくなかった。一度絆が解けてしまえば、新撰組はばらばらになってしまうだろう。だからこそ、今の自分が新撰組のために出来ることは、自ら退くことだけなのだ」と、新撰組という組織の強さを守るために。
「沖田君、君に新撰組を大事に思う気持ちがあるのなら、忘れないでくれ、君らの強さの礎となっている者を」
表情は陰になって読み取ることが出来なかったが、そう言葉を結んだ山南さんの声からは、固い意志が感じられた。
その決意を前にして、俺はもはや何も問いかける言葉を持たなかった。
そして、山南さんが腹が切ることになったのは、その翌日のことだった。
听到这个消息时我简直不敢相信自己的耳朵。山南怎么可能会违背那个铁则。按新撰组的纪律,擅自离队会被切腹。我实在无法理解理性的山南,身处副局长的他为何会作出这种鲁莽的举动。尽管,我知道山南对如今的新撰组心存不满。想办法让幕府认可新撰组。围绕今后的方针,山南与土方发生冲突的次数不断增加。
“拜托你逃掉吧。”
我觉得山南可能前往江户,接受追击的任务之后,我策马向着江户方向追踪山南而去,并一边在心里默默祈祷,永远不要让我找到他。但是,事情却以一种意外的形式背离了我的期望。
那是在到达大津旅馆的时候。在一家客栈前,山南叫住了我。
“冲田君,你来晚了啊。”
当时我正在找地方让马休息。看着山田一脸笑呵呵的样子坐在客栈前面,我愣了一下。
“等了你这么久,我都有点冷了呢。”
他一边说着,一边夸张地搓着身上。看起来就像是刚刚散完步回来。
“为什么?!你为什么要这么做?!”
但是,面对我的质问,山南只是轻轻地笑了。
“‘为什么’啊。我想你一定还有很多话要说吧,不过现在已经很晚了。今天先在这里住下,明天早上再出发吧。”
说完,山南理所当然似的快步走进了客栈。我也只好跟着他进去了,一面在心里对山南的态度感到疑惑不解。擅自出走的山南,简直没有半点要逃的意思。
“你为什么要逃走?能告诉我吧。”
当晚,在灰暗的客栈中,我一边跟山南喝着洒,一边忍不住说出憋在心里很久的疑问。
“究竟是什么?为什么?”
面对着不断重复着同一个问题的我,山南忽然自嘲地笑了。
“因为对于现在的新撰组而言,我的存在本身就是一个障碍啊。”
说完,他沉默了,看着客栈的天花板。最后,山南叹了一口气,终于继续说了下去。
“冲田君,其实我啊,可能在心底的某个地方一直都瞧不起你们。你们没什么学问,只不过是一群来自多摩乡下的剑客。但同时,我又很羡慕你们。羡慕你们朴素的热情,羡慕你们可以不讲大道理不算计得失,就能单纯地相信别人的那种纯粹。正因为这样,我才会留在试卫馆道场跟你们在一起。”
说这些话的时候,山南的视线仿佛在看着某个遥远的地方。就像,看着那个早已失去的,熟悉的故乡一样。
“而我觉得,这种羁绊正是新撰组的优点,也是新撰组强大的原因。但是,现在这种羁绊正在出现裂痕。冲田君,比如说你吧。你不是因为顾虑我,才会和近藤还有土方保持距离的吗?我不希望因为我与土方的对立,把其他的队员们也卷入进来。队员之间的羁绊一旦离析,新撰组应该会四分五裂吧。正因为这样,现在我能为新撰组做的事,就是自己主动退出。”他这么做是为了维护新撰组这个组织的力量。
“冲田君,如果你真的重视新撰组的话,请你不要忘记那些为了你们的强大而成为基石的人们。”
他的表情被阴影遮住不怎么看得清,但是从山南的声音中,我感觉到了他坚定的意志。
面对着他的这种坚决,我什么也说不出来了。
然后,山南的切腹就是在第二天进行的。
11 不信
慶応元年、2月23日、壬生屯所の奥座敷で、山南さんの切腹が行われようとしていた。
もろ肌を脱ぎ、すっかり腹を切る準備を終えた山南さんを見下ろしながら、俺は祈るような心持で、切腹の見届け役である、局長の近藤さんと、副長の土方さんへと視線を向けた。
そうだ、今ならまだ間に合うはずだ。近藤さんが許すと、一言告げさえすれば。彼らが京の都で、新撰組を創設して2年、山南さんは、それ以前から二人と盟友だった。近藤さんが館長を勤める試衛館道場で、同じ時を過ごした仲間だった。俺はそんな彼らの絆に願いを託した。この土壇場にきて、考えを改めてくれるかも知れないと。だが、ついに近藤さんの口から、切腹を思い止まらせる言葉が発せられることは無かった。
なぜだ、近藤さん?土方さん!俺達は同じ新撰組じゃなかったのか?!苛立ちと質問が胸の中に湧き上がってくる。結局、俺が経験から学んだことは間違っていなかったということなのか。やはり人は簡単に裏切るのだ。と、そんな俺の心中を察したかのように、山南さんが言葉を発した。
「沖田君、誰かを恨んではいけないよ。恨めば君が辛くなるだけだ」
そして次の瞬間、腹に脇差を突き立てる。
「山南さん、ごめん!」
俺はうめくと同時に、刀を振り下ろした。たちまち床に敷かれた白布に鮮血が舞う。こうして、新撰組副局長山南敬助は、32歳の短い人生を終えたのだった。
「総司、はっきり言ったらどうだ、俺が憎いと」
屯所の庭先で稽古を励む俺に、土方さんが声をかけてきたのは、山南さんの切腹から、数日経ってからだった。恐らく顔を合わせる度に、俺が不満そうな表情を見せることが気になっていたのだろう。だが、俺はわざと惚けて見せた。こうなったからには、今さら彼らに自分の内面を晒すつもりなど無かった。
「なぜ俺が土方さんを憎んだりすると思うです?局中法度は絶対でしょう。山南さんもそれに従うことをよしとしていた。誰かを恨んだりするのは筋違いだ。そうじゃありませんか」
そういって俺はわざと慇懃無礼な態度を取って見せた。だが、土方さんは表情も変えず、いつものように察すような視線で俺を見ただけだった。
「ならいい。ただ、一つだけ言っておく。今回の件は、近藤さんではなく、俺に責がある。だから、わだかまりがあるなら俺を憎め。俺は元から、この新撰組を守るためなら鬼になる覚悟だ。誰から憎まれようと構いやしない。総司、例えそれがお前であろうと」
それは開き直ったとしか思えない言葉だった。要は隊のためにならない者は、誰であろうと容赦しないということか。我慢の限界だった。そのストレートの物言いに怒りを覚えた俺は、土方さんを睨み付けると、口を開いた。
「分かりました。そこまで言うなら、教えてあげますよ。ええ、憎いですと思う。どこまでも冷徹になれるあなたが!古い仲間を犠牲にしても平気でいられるあなたが!どうです、これで満足ですか?!」
それだけ言い放つと、俺は土方さんを残して、足早にその場を去った。話を続けていったら、激情に駆られて、何を言い出すか分からない気がしたのだ。
俺は新撰組に、近藤さん達に一体何を期待していたんだ。一つの命が消え、残されたのは、まるで自分が切られたかのような激しい空しさだった。
生まれ変わり、掛け替えの無い友、本当の仲間を得たと思った。しかし、それは全て俺の願望でしかなかったのだ。
庆应元年,2月23日,壬生屯所内厅,山南的切腹即将进行。
露出上半身,山南的切腹准备已经准备妥当。我低头看着山南,一边怀着一丝祈祷的心情把视线转向负责监守的局长近藤和副长土方。
是的,现在还来得及。只要近藤他说一句,放了他的话。他们在京都创设新撰组2年,而山南此前就已经跟他们是盟友。在近藤担任馆长的试卫馆道场里,他们是一同生活过的伙伴。我寄希望于他们之间的交情。说不定在这最后关头,他们会重新考虑一下。但是,近藤最终还是没有开口阻止山南切腹。
为什么?近藤!土方!我们不都是同在新撰组的朋友吗?!愤怒和质问一起涌上心头。说到底,我的人生经历所得出的结论是正确的吗?人们果然可以轻易地背叛。仿佛觉察到了我内心的这种想法,山南开口了。
“冲田君,不要怨恨任何人。憎恨只会让你更加痛苦。”
紧接着,他就把刀刺向自己的腹部。
“山南,对不起了!”
从喉咙里挤出这句话的同时,我的刀砍了下去。地板上铺好的白布上立即染满了鲜血。
就这样,新撰组副局长山南敬助,结束了他32年的短暂人生。
“总司,你干脆把话明说了吧。你恨我。”
土方跟我说这句话的时候,我正在屯所的院子里练剑。当时,山南的切腹已经过了数日。多半是因为每次跟我见面时,我都一副极其不满的表情吧。但是,我却开始装傻。事已至此,我也没打算再让他们知道我的想法。
“你为什么认为我会恨你呢?局中法规不是绝对的吗?山南也只是遵守了而已。我哪有理由去恨谁。难道不是吗?”
我故意带着极其不满的态度以恭维的口吻说出这番话。但是,土方表情一点也没变,只是以他一贯的洞悉一切的眼神默默地看着我。
“那就好。只不过,有句话我说在前面。这次的事,责任在我,与近藤无关。所以,你心里要是真有什么怨恨,只管冲我来。为了保护新撰组,我原本就有成为魔鬼的觉悟。不管谁恨我我都不在乎。总司,包括你在内。”
他这些突然严肃起来的发言,说白了就是“只要对队伍没用的人,不管是谁也决不留情”。我再也忍不住了,他这种直接的措词让我怒火中烧。我狠狠地盯着土方,开口说道:
“我明白了。既然你这么说,那我就告诉你。不错,我恨你!恨你这种冷酷无情!恨你居然可以对老朋友的牺牲无动于衷!怎么样,这样你满意了吧?!”
说完这些,我急忙快步离开,留下了土方一个人。要是继续说下去,过于激动的我,真不知道还会说出些什么来。
我到底对新撰组,对近藤他们在期待些什么啊。一个生命的消失,所留下的无限空虚仿佛要把我劈开了一般。
原以为我已经重生了,原以为我已经找到了无可替代的挚友,找到了真正的同伴。但原来这一切,只不过是我的一厢情愿。
12 絆
その夜のことだ。見回りから帰ってきて、床に入ったものの、昼間のやり取りが頭を離れず、俺はなかなか寝付くことが出来なかった。一層俺も山南さんのように脱走してしまおうか。ふっとそんな考えが頭をよぎる。薄情な裏切り者達とこれ以上を一緒にいたくは無かった。とにかく、ここから離れるのだ。いずれ俺の体は病に蝕まれていくだろうが、そうなったときのことは後から考えればいい。いいさ、なるようになれた。
覚悟お決めて、そっと部屋を抜け出すと、俺は誰にも見つかれないように、屯所の外へと向かった。だが、その途中だった。足音を殺し、廊下を歩いているところで、話し声が聞こえてきたのだ。
「歳、本当にあれでよかったのか?総司のやつ、完全に誤解しているぞ」
襖の向こうから聞こえたその言葉に、俺は思わず足を止めた。
「この声は…近藤さん。それじゃ相手は土方さんか。」
盗み聞くつもりは無かった。ただ聞こえて来た名前に、俺はその場から動けなくなってしまった。
「お前はあれ程山南さんに腹を切ることを思い止まらせようとしたというのに、これではまるで反対だ。そもそも、山南さんは新撰組をまとめる為に自ら死を選んだ。お前と総司が対立することなど、望んではいなかったはずだ」
そんな!近藤さんの言葉に、俺は思わず声を漏らしそうになった。山南さんが自ら死を望んでいたのは本人の口から聞いて知っていた。しかし、その山南さんを、あの土方さんが救おうとしていたというのか。俺はその事実に驚き、更に、次に続く会話に激しく動揺した。
「分かっているさ。それでも誰かが言う必要があった。あいつは新撰組の一番隊隊長としての責任がある、何時までも落ち込んだままにさせて置く訳にはいかないだろう。それに俺は、これ以上辛気臭い面でいるあいつを見たくなかったんだよ。ああやって派手に俺を憎んでくれた方がまだましだ。」
「すまない、歳。またお前だけは悪人にしちまった。」
「なに、大丈夫だ。総司なら、きっと何時かは理解してくれる。」
「あいつはそういうやつだ」
そう言って近藤さんが笑う声が聞こえた。それは共に剣の腕を磨いた、道場時代からの仲間にしか見せない笑い方だった。相手を信じきった笑み、近藤さんがいかに、沖田総司という人間を信頼しているかの証だった。
そこまで聞いて、俺はその場を離れた。
「くそっ!なんて馬鹿なんだ。」
昼間の土方さんの言葉は全て演技だった。それも、俺を挑発して、やる気を出させるための。結局、何も分かっていなかったのは俺のほうだったのだ。俺は、近藤さん達が仲間である山南さんを裏切ったと思っていた。だが、実際には違った。そもそも、俺に彼らを非難する権利など、初めから無かったのだ。むしろ裏切っていたのは俺だ。ふっと、山南さんの言葉が脳裏に浮かぶ。新撰組の強さは、理屈や計算を抜きした、純粋さに結ばされていることだと。しかし、俺はそんな純粋さを逆手に取り、彼らが最も信頼する相手の振りをして騙し続けている。
同じだ。かつて自分は、親友と思っていた相手に裏切られ、人に心を閉ざすようになった。今の自分は、あのときの相手と何が違うというのか?ふっと浮かべかけた考えを慌てて打ち消す。確かに近藤さん達を騙しているのは、気分のいいものじゃなかった。しかし、ほかに選択肢は無い。どうしようもない話なのだ。そもそも、本物の沖田じゃないと話したところで、近藤さん達にとって何の意味がある?偽者も本物も無い、既に俺以外に沖田総司はいないのだから。でも、果たして本当にそうなのだろうか?
当天晚上,我巡逻完回来,我躺在床上,脑子里一直想着白天的争吵,怎么也睡不着。干脆我也像山南一样出逃算了。脑子里突然冒出这个念头。我实在没办法再跟这群无情的叛徒继续呆在一起。不管怎么样,先离开这里。总有一天我的身体会被病魔侵蚀,不过这件事以后再考虑。就这样吧。车到山前必有路。
下定决心之后,我轻轻走出房间,偷偷地向屯所外走去。但是,就在途中,就在我小心翼翼地穿过走廊的时候,听到有人说话。
“岁,真的就这样了吗?总司那家伙,完全误会你了。”
听到从拉门的后面传来的这句话,我不禁停住了脚步。
“这声音是…近藤。这么说另一个人应该是土方了。”
本来我也没有打算偷听,只是听到我自己的名字之后,我就挪不开脚步了。
“你当初那么苦口婆心地劝山南打消切腹的念头,这样不是正好反过来了吗?再说,山南自己选择死是为了新撰组的统一。他也不希望你和总司对立。”
“怎么可能?”听到近藤的话,我差一点叫出声来。山南曾经跟我说过是他自己选择死的,这一点我清楚。但是,土方原来曾经尝试过救山南?我被这个事实震惊了,接下来的谈话更加剧了我的动摇。
“我知道。但是有些话总得有人跟他说才行。他肩负着作为新撰组一番队队长的责任,不能总让他这样一直消沉下去吧。何况,我出看够他成天一副焦燥不安的样子了。就让他这样发泄出来反而更好。”
“对不起,岁。这次又让你当恶人了。”
“没什么,放心吧。以总司的为人,总有一天会明白的。”
“那家伙就是这种人。”
我听见近藤笑着说道。这是只有一起练剑,一起从道场时代走到现在的朋友才有的笑声。是完全信任对方的笑声。那是近藤对冲田总司完全信赖的证明。
听到这里,我就离开了。
“该死!我怎么这么蠢!”
白天土方的那些话全都是在演戏。而且是故意向我挑衅,目的是让我振作起来。说到底,什么都不懂的人只有我。我以为近藤他们背叛了朋友山南,而实际上不是。原本我就没有责备他们的资格,甚至可以说背叛的人是我。突然,山南的话语在我的心中响起。新撰组的强大,就是因为那种不讲大道理不算计得失的那份纯粹把人们团结在一起。但是,我却反而利用了这种纯粹,我一直假装成他们最信任的人,欺骗着他们。
一样的。以前我曾经被自己认为的挚友背叛,因而才会对人紧闭心门。现在的我,与当时欺骗我的那个人有什么区别?我慌忙打消脑海里突然浮上的这个念头。欺骗近藤他们的滋味确实不好受。但是,我别无选择。我没有别的办法。再说,即使告诉他们我不是真正的冲田,对近藤他们来说又有什么意义?真的也好假的也罢,现在除了我之外没有第二个冲田总司。但是,事实真的是这样吗?
13 大切なもの
そのまま寝床に戻った俺は一つの夢を見た。過去の記憶の夢だ。そうは言っても俺の過去じゃない、本物の沖田総司が経験したであろう過去の記憶。まだ京に出てくる何年も前、多摩の道場で、仲間達と稽古に励み、夢を語り合い、楽しく過ごしていた頃の夢だった。そこでは、皆が笑っていた。近藤さんも、めったに笑顔を見せない土方さんも、死んだ山南さんも、ほかの仲間達も、皆が笑みを浮かべていた。それは、近藤さんや土方さんへの信頼と、山南さんやほかの仲間達への情に満ちた夢だった。
飛び起きて、俺は自分の頬が濡れていることに気づいた。夢を見ながら、俺は泣いていたのだ。俺にとっては、なんの思い出もない夢のはずなのに。その瞬間、俺は悟った、俺の中でまだ本物の沖田総司が生きているのだと。そして、壊れ行く友情を憂いでいるのだと。
「答えは出たな」
そう呟くと、俺は寝床を抜き出し、早朝の京の街を近くの神社へと向かった。ある決意を持って。
やがて神社につく頃には、すっかり日が昇り、辺りを照らし始めていた。そのまま石段を上りきって、人気の無い境内に出ると、そこには、あの老人が立っていた。
「そろそろ来る頃だと思っておったよ。本当に構わないのか」
そう尋ねる老人に黙って頷く。既に覚悟は決まっていた。現代へと戻るのだ。例えそれで命を落とすことになろうとも、なすべき事をすべきなのだ。山南さんがそうやって、大切なものを守ったように。新撰組の人々に出会い、俺は人を信じることの喜びを知ることが出来た。それは、自分が体を借りている沖田総司のおかけでもある。そんな彼らのために出来ることがあるとしたら、それは一つしかない。この体を、元の持ち主に、本物の沖田総司に返すのだ。そして、その為には、邪魔な俺が消える必要がある。
「よかろう。では、目を閉じるがいい」
老人がそう告げると同時に、たちまち周囲に光が満ちて行く。
「一つ訂正するよ、あんたは死神なんかじゃなかった。短い間だが、あんたは俺に夢を見せてくれた、とてもいい夢を」
そう言って、再び老人へ視線を向けた時だった。俺は思わず言葉を失った。
「そんな!」
驚いたことに、老人の姿は、一人の若い侍にすり替わっていたのだ。そう、それはこの数ヶ月、誰よりも俺の近くにいた男、俺が身代わりを務め続けた相手、沖田総司だった。
「ありがとう」
ふっと彼の口が、そう動いたように思えた。俺の願望が、幻となった現れたのだろうか。だが、幻だろうと構わなかった。その瞬間、俺は自分の心が満たされていくのを感じたのだ。今まで味わったことの無い、なにか、とても暖かいもので。
「よかったんだよな、これで」
沖田に見送られるように俺は薄れ行く意識の中で、ゆっくりと目を閉じた。暖かい春の日差しに包まれたかのように感じながら。
就这样我又回到床上,然后做了一个梦。那是过去的记忆的梦。话虽这么说,但不是我的过去,而是真正的冲田总司所经历的过去。在来京都多年以前,还在多摩的道场时候,跟朋友们一起练剑,聊将来梦想的愉快时光。在梦里,大家都在笑。近藤,很少笑的土方,已经死了的山南,还有其他的同伴,大家都在笑。那是一个满载着对近藤和土方的信赖,还有对山南和其他朋友的感情的梦。
我突然起身,然后发现自己的脸庞湿润了。做梦的时候,我哭了。这个梦对我来说,明明没有任何印象。这一瞬间,我明白了。在我的体内,真正的冲田总司还活着。而且,在为即将崩溃的友情担忧。
“答案已经揭晓了。”
我小声自言自语,从床上爬起来,穿过清晨的京都街道,向附近的神社走去。我已经决定了。
到达神社的时候,太阳已经完全升起,周围的一切都被照亮了。我走上石阶,来到无人的内院,然后,就看到那个老人站在那里。
“我猜你也差不多该来了。你真的愿意这样吗?”
我默默地向老人点了点头。我已经做好准备了。我要回到现代去。就算这意味着死,我也要做我应该做的事。山南就是这样,保护了他所珍视的东西。通过与新撰组的人相识,我了解了信任别人的喜悦。这也多亏了冲田总司把躯体借给我。而我能为他们做的事,只有一件。就是把这副躯体还给他本来的主人冲田总司。而要做到这一点,我这个障碍必须消失。
“好吧。那么,请闭上眼。”
老人说这句话的同时,周围立即充满光芒。
“有句话我要更正,你不是死神。虽然时间很短,但是你让我做了一个梦,一个非常美好的梦。”
说着,我再次看向老人。然后,又说不出话来了。
“怎么可能!”
让我吃惊的是,老人不知何时变成了一个年轻武士的样子。没错,那就是数月以来,离我最近的人,我一直在扮演的人,冲田总司。
“谢谢。”
忽然,我仿佛看到他的说出了这几个字。是我的愿望以幻影的方式实现了吗?但是,即使是幻影也好。在这一瞬间,我感觉到自己的心被填满了。被我迄今为止从过体验过的某种温暖的东西填满了。
“这样就够了吧。”
冲田好像在为我送行,意识在渐渐消失,我慢慢地闭上眼睛。好温暖,我感觉自己好像被春日的阳光包围了。
大感谢!!!